生成AIの使いどころ
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チェックアンドバランスのように二つの生成AIの答えを照らし合わせると誤りは見抜けるのか|答えの食い違いの研究

居間で開いた画面には、同じ質問に対する生成AIの説明が並んでいます。公民で習うチェックアンドバランスを思い浮かべると、別々の相手に答えさせれば、互いの誤りを見つけられそうに感じます。この語は、権力どうしが互いに抑え合い、均衡を保つ仕組みを指します。三権分立では、権力を分けることと、それぞれが他の権力を抑える働きを持つことが組み合わされています。

この記事の要点

チェックアンドバランスのように二つの生成AIの答えを照らし合わせると誤りは見抜けるのか|答えの食い違いの研究

居間で開いた画面には、同じ質問に対する生成AIの説明が並んでいます。公民で習うチェックアンドバランスを思い浮かべると、別々の相手に答えさせれば、互いの誤りを見つけられそうに感じます。この語は、権力どうしが互いに抑え合い、均衡を保つ仕組みを指します。三権分立では、権力を分けることと、それぞれが他の権力を抑える働きを持つことが組み合わされています。

生成AIの場合に気になるのは、説明が食い違えば誤りに気づけるのか、反対に説明が一致したら安心して宿題に使えるのかという点です。答えの食い違いは調べる箇所の目印になりますが、答えの一致だけでは正しさの保証になりません。研究には、複数の答えを利用して成績を高めた方法と、異なるモデルが同じ誤答を出した結果の両方があります。画面の説明を見比べる際には、文章全体の印象から正解を選ぶ作業と、確かめるべき主張を拾う作業を分けると、比較の目的がはっきりします。

要点

チェックアンドバランスの発想は、AIの比較でどう働くか

別々の答えを読むと、最初の説明では目立たなかった違いを拾えます。ただし、AIが答えを出す仕組みには、政治の制度にあるような役割分担や相互の権限が備わっているわけではありません。チェックアンドバランスというたとえは、答えを無条件に受け入れず照合する発想には使えますが、AIを増やせば自動的に監視が働くという意味にはしないほうがよいです。

Wang ほか(2023)は、同じ言語モデルに同じ問いを何度も解かせ、複数の考え方から最も多く出た答えを採る方法を調べました。言語モデルとは、大量の文章から次に続く語を予測するように学習した仕組みで、対話型の生成AIの土台になります。この方法は自己一貫性と呼ばれ、途中の道筋が違っても、最後の答えがどれだけそろうかを利用します。算数の文章題の問題集GSM8Kで、考え方を出して解かせる従来の方法に対する改善は、原典で+17.9%と報告されました。

この研究を読む際には、比較した単位に注目します。同じAIから複数の解答を集める方法と、別のサービスを開いてそれぞれに説明を頼む方法は、実験の条件が異なります。また、最後の数値を比べる算数の問題と、複数の主張を含む公民の説明では、何をもって一致とするかも変わります。説明の冒頭だけが似ていても、理由や条件までそろっているかは別に読む必要があります。

居間の画面で比べるなら、回答全体に丸を付ける前に、質問への結論と、それを支える理由を分けて見ます。結論が同じでも理由が食い違う場合には、その理由を比較の対象として残します。逆に、言葉が違っていても同じ内容を指している場合には、表現の好みと事実の正誤を混同せずに扱います。

食い違いを目印にすると、何が見つかるか

Manakul(2023)が提案したSelfCheckGPTは、GPT-3に人物紹介を書かせ、同じ問いへの文章どうしを比べる方法です。対象は英語の人物紹介文で、答えの食い違う文を、事実に合わない記述の疑いとして扱いました。人が付けた正誤の評価と照らすことで、文単位で作り話を検出し、文章全体の事実への合い方を順位づけられることを示しました。ここでの作り話は、意図的なうそという意味ではなく、もっともらしく生成された事実に合わない内容です。

この方法の着眼点は、長い回答を丸ごと信用するか捨てるかではなく、疑わしい文の位置を絞ることにあります。人物紹介であれば、所属や出来事の年など、同じ対象について異なる内容が出る箇所を拾う考え方です。説明の読みやすさが同程度でも、細部の主張を並べると食い違いが見える場合があります。学習で比較するときにも、違いが出た箇所を短く抜き出すと、次に調べる対象を具体的にできます。

Farquhar(2024)は、単なる語句の違いではなく、意味の違いを測る方法を示しました。同じ意味の答えをまとめ、そのまとまりがどれだけわかれるかを表す尺度が「意味のエントロピー」です。この方法は、その場ごとに異なる誤答が出る種類の作り話を見つけ、特に注意して扱う問いを示す助けになりました。毎回同じ誤答を出す場合はこの検出の対象外であり、ばらつきが小さいというだけで正しいと決める使い方には穴があります。

読者が目で比較するときにも、文字列が異なるだけの言い換えと、内容の食い違いを分ける作業が要ります。主語が同じか、同じ時期を述べているか、同じ条件を前提にしているかを追えば、比較する場所をそろえられます。たとえば条件の付いた説明と、条件を省いた説明を同じ主張として数えると、肝心の差が消えます。食い違いを見つけた段階では、誤りの場所を確定したのではなく、調べる候補を得たと捉えます。

一致した答えにも、同じ誤りが残る理由

別のAIが同じ結論を出すと、裏づけが増えたように見えます。しかし、その判断には、相手どうしが別々の形で間違えるという前提が含まれます。同じ方向に間違えやすい相手が集まれば、票がそろっても誤りが残ります。比較では、答えの数に加えて、誤りの重なり方を見る必要があります。

Kim(2025)は、350を超える言語モデルを対象に、公開の成績表のデータや履歴書の選考課題を分析しました。ある成績表のデータでは、両方のモデルが誤った場合、その60%で同じ誤答を選んでいました。この割合の分母は、両方が間違えた場合であり、全回答のうち誤答が占める割合ではありません。さらに、会社や仕組みが違っても、大きく正確なモデルほど誤りが強く重なる結果でした。

この結果から、サービスの名前を変えただけで、独立した裏づけを得たと考えるのは早計です。独立した裏づけとは、別々の根拠や確認の経路から同じ主張を支えることです。画面が別であることは、根拠が別であることを示しません。たとえ説明が流暢でも、同じ内容を繰り返したことと、その内容を証拠で支えたことは分けて扱います。

研究ごとの違いを並べると、比較が働く場所が見えます。次の表は、仕組みの性能を測った結果と、誤りの重なりを調べた結果を対照させています。それぞれの研究で対象も比較相手も違うため、どの問いに答えた研究かを列で追います。

研究 よく言われること 研究で言えること 比べた相手 対象
Manakul(2023) 答えの違いから作り話を探せます 文の正誤の検出と、文章の事実への合い方の順位づけができました 既存の検出方法 英語の人物紹介文
Kim(2025) 別のAIなら誤りも別になります 仕組みや提供元が違っても、正確なモデルの誤りは強く重なりました モデルどうしの誤答 350を超える言語モデル
Smit(2024) 討論させるほど正確になります 討論は他の方法を安定して上回らず、調整に左右されました 自己一貫性や複数の推論経路を組み合わせる方法 複数のAIに討論させる方法

AIに議論や判定を任せると、比較は確かになるか

Du(2024)は、同じ種類のモデルの分身にそれぞれ答えと理由を出させ、やり取りを通じて答えをまとめる方法を試しました。このように複数の応答役を設けて議論させる仕組みを、複数エージェントの討論と呼びます。算数や戦略の推論が改善し、事実に合う記述も増える結果でした。単独の回答を受け取るだけでなく、反対意見や別の理由を処理させる工夫に効果があった研究です。

一方、Smit(2024)の対象は、複数のAIに討論させる方法でした。比較では、討論を行う仕組みは、自己一貫性や複数の推論経路を組み合わせる方法を安定して上回りませんでした。細かな設定を調整すると良くなる方法もあり、討論という形だけで成果が決まるわけではありません。先に見たDu(2024)の結果と合わせると、議論を増やすことより、どの方法とどの条件で比べるかが評価のわかれ目になります。

さらに、回答を選ぶ審判役にも偏りがあります。Wang ほか(2024)は、GPT-4やChatGPTに回答を評価させると、並べる順番を変えるだけで判定が動くことを示しました。ChatGPTを評価役にした条件では、順番を操作して、Vicuna-13Bが80問中66問でChatGPTに勝つように見せられました。これは製品の優劣を示す数字ではなく、見せ方によって評価をゆがめられた例です。

居間で回答を貼り合わせ、AIに正しいほうを選ばせても、選択の理由を読む作業は残ります。文章が先に置かれたことや、説明が整って見えることが、判断に紛れ込むためです。正誤の根拠がなく、判定役の結論だけが増える状態なら、さらにAIを呼ぶ作業は止めるほうがよいです。勝者を決めるための会話を続けるより、争点を残したまま比較を区切れます。

居間で照らし合わせるときは、主張をどう分けるか

ここからは、研究の着眼点を学習の比較に移すための手順です。まず、同じ質問文を使い、それぞれの最初の回答を残します。最初から片方の説明をもう片方に見せると、別々に出た答えの比較と、相手を読んだ後の修正が混ざります。聞いた質問と得た回答を対応させておくと、後でどこが変わったかを追えます。

次に、主張の単位をそろえます。答えを「結論」「理由」「条件」「数字や年」に分け、片方にしか書かれていない内容も拾います。記載がないだけの箇所を反対意見として扱わず、明らかに食い違う主張と、情報量が違う箇所を区別します。指示を補うなら「それぞれの答えの結論、理由、条件を分けて示してください」と短く頼めますが、分け方も元の文を見ながら点検します。

食い違う箇所に印を付けたら、そこを教科書や用語集の該当部分と照らして確かめます。一致した箇所でも、出典を示せない数字や年は調べる側に回します。資料の名前だけで終えず、どの項目のどの説明がその主張を支えているかまで記録します。AIが資料名を挙げていても、その記述を実際に読めた場合と、名前だけ見えた場合は別の欄にしておくと、確認の進み具合を混ぜずに済みます。

その結果は「根拠を読めた内容」「食い違いが解けていない内容」「片方だけの補足」に分けて残せます。保留した箇所を消して滑らかな説明にまとめると、どこで判断が止まったかが見えなくなります。意味の違いを自分で追えないときや、確認に使う記述が手元にないときには、AIだけで説明を完成させない選択が適しています。比較のために使う機能や条件は変わるため、利用するサービスの最新の案内で、回答の保存や比較に使える方法を確かめます。

保護者は、答えの一致をどう受け止めるか

保護者が見る点は、子どもが両方のAI以外の資料を挙げられるかです。答えがそろったという報告に対して、利用したサービスの多さを評価するより、その説明のよりどころとして何を挙げるかに耳を傾けます。ここでは親がその場で正解を言うより、子どもがAIの返答と資料の名前を区別して話しているかを見ることができます。説明がよく似ていたという感想と、根拠の所在を述べる言葉の違いが焦点です。

資料名を挙げられた場合には、どの主張についてその資料を挙げたのかまで聞くと、答えとの対応が見えます。文章全体の出典として名前を添えただけの場合と、年や用語の意味を支える資料として選んだ場合では、説明の仕方が変わります。AIが出した資料名をそのまま話している段階なら、すでにその資料を使い終えた段階とは区別して受け止めます。子どもを急がせて確信のある言い方にさせるより、いま挙げられる根拠の範囲をそのまま聞くほうが、比較の到達点が見えます。

資料を挙げられないときも、AIを使ったこと全体の評価に話を広げる必要はありません。話題を、いま読んでいる説明の根拠がどこにあるかに留めると、次に調べる対象がぼやけません。両方のAIの説明だけが根拠なら、そのことを短く記録した状態で会話を区切れます。根拠の名前がまだ挙がらないことも、比較を終える前の状態として残せます。

居間の画面を閉じる前には、読み比べた回答をすべて整えて写すのではなく、採用した主張と保留した主張を残します。採用した側には、その判断に使った根拠を添えます。保留した側には、言葉の意味、条件、数字のうち何が決まっていないかを短く書き、次に調べる箇所を絞ります。

よくある質問

同じAIに繰り返し聞く方法でも比べられますか

同じAIの回答どうしでも、結論や理由のばらつきは比べられます。先に見たWang ほか(2023)の方法は、まさに同じモデルから複数の推論を取り出すものでした。ただし、長い会話で前の回答を読ませながら修正する作業と、同じ問いから別々の回答を集める作業は分けて記録すると、どの段階の違いを見ているかが明確になります。

回答が食い違ったら、どちらかは誤りですか

同じ対象と条件について両立しない主張なら、少なくともそのまま両方を採用することは避けます。ただし、扱う時期や条件が違う説明、片方だけが詳しい説明は、直ちに矛盾とはなりません。比較する主語と条件を抜き出し、同じ内容について異なる答えを述べているのかを先に見ます。単に言い回しが異なる箇所は、事実の食い違いの印から外します。

答えの順番を入れ替えてAIに判定させれば十分ですか

順番を入れ替えることは、判定の揺れを調べる方法になります。先に見たWang ほか(2024)の研究でも、複数回の判定などによる補正で人の判断に近づけました。しかし、順番を変えても同じ回答が選ばれたことと、その中の主張が正しいことは別です。判定を記録するときには、選ばれた回答名だけでなく、選択の理由が内容のどの部分を指すかも残します。

この記事の限界

測定の中心は、モデルが算数や推論を解く成績、英語の人物紹介の正誤、回答を評価する仕組みの性能です。日本の中高生が日本語の公民の説明を読み比べる学習や、比較を続けた後の見抜く力の変化を測った研究は、今回集めた範囲にはありませんでした。

GPT-3による人物紹介やGPT-4、ChatGPTによる判定には当時のモデルの条件があり、現在のモデルでも同じ結果になるかは、この研究群だけでは判断できません。人が自分で二つのAIを見比べたときにどれだけ誤りを見抜けるかという問いは、引いた研究の外に残っています。

参考文献

  1. Wang X ほか. Self-Consistency Improves Chain of Thought Reasoning in Language Models. In: The Eleventh International Conference on Learning Representations (ICLR 2023). OpenReview 1PL1NIMMrw.
  2. Du Y ほか. Improving Factuality and Reasoning in Language Models through Multiagent Debate. In: Proceedings of the 41st International Conference on Machine Learning (ICML 2024). PMLR 2024;235:11733-11763.
  3. Manakul P ほか. SelfCheckGPT: Zero-Resource Black-Box Hallucination Detection for Generative Large Language Models. In: Proceedings of the 2023 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing (EMNLP 2023). 2023:9004-9017. doi:10.18653/v1/2023.emnlp-main.557
  4. Farquhar S ほか. Detecting hallucinations in large language models using semantic entropy. Nature 2024;630(8017):625-630. PMID 38898292 doi:10.1038/s41586-024-07421-0
  5. Kim E ほか. Correlated Errors in Large Language Models. In: Proceedings of the 42nd International Conference on Machine Learning (ICML 2025). PMLR 2025;267:30038-30066.
  6. Smit A ほか. Should we be going MAD? A Look at Multi-Agent Debate Strategies for LLMs. In: Proceedings of the 41st International Conference on Machine Learning (ICML 2024). PMLR 2024;235:45883-45905.
  7. Wang P ほか. Large Language Models are not Fair Evaluators. In: Proceedings of the 62nd Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics (Volume 1: Long Papers) (ACL 2024). 2024:9440-9450. doi:10.18653/v1/2024.acl-long.511

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よくある質問

同じAIに繰り返し聞く方法でも比べられますか

同じAIの回答どうしでも、結論や理由のばらつきは比べられます。先に見たWang ほか(2023)の方法は、まさに同じモデルから複数の推論を取り出すものでした。ただし、長い会話で前の回答を読ませながら修正する作業と、同じ問いから別々の回答を集める作業は分けて記録すると、どの段階の違いを見ているかが明確になります。

回答が食い違ったら、どちらかは誤りですか

同じ対象と条件について両立しない主張なら、少なくともそのまま両方を採用することは避けます。ただし、扱う時期や条件が違う説明、片方だけが詳しい説明は、直ちに矛盾とはなりません。比較する主語と条件を抜き出し、同じ内容について異なる答えを述べているのかを先に見ます。単に言い回しが異なる箇所は、事実の食い違いの印から外します。

答えの順番を入れ替えてAIに判定させれば十分ですか

順番を入れ替えることは、判定の揺れを調べる方法になります。先に見たWang ほか(2024)の研究でも、複数回の判定などによる補正で人の判断に近づけました。しかし、順番を変えても同じ回答が選ばれたことと、その中の主張が正しいことは別です。判定を記録するときには、選ばれた回答名だけでなく、選択の理由が内容のどの部分を指すかも残します。