面接練習に生成AIを使う——模擬面接の研究と、やってはいけない使い方
生成AIは夜中でも面接官役になってくれますが、練習相手になることと本番でうまく話せることは別です。研究と公的な資料を読み、質問はAIに出させ、答えの中身は自分で用意して声に出す使い方を考えます。
- 練習ソフトで面接の技能が上がったという研究はありますが、合格や内定が増えると示した研究はありません。
- 生成AIとの練習の研究は、比べる群が無いなど設計が弱く、結果も割れています。
- AIの点数は人の面接官の代わりになりません。弱い点を挙げさせる使い方のほうが確かめやすくなります。
- AIの答えを読み上げた実験では、中身の評価は上がっても話し方は変わらず、正直さの評価は下がりました。
- 文字で打つより声で話す練習を選び、最後は人の前で話して確かめます。
- 受ける大学の募集要項と生成AIの方針を、自分で読んで確かめます。
このページで分かること
面接の前の晩、家族に面接官役を頼むのは気が引ける。そんなとき、生成AIに「面接官になって質問して」と頼めば、夜中でも練習相手になってくれます。便利なのは確かです。ただ、練習相手として役に立つことと、本番でうまく話せるようになることは別です。このページでは、総合型選抜・推薦入試・就職活動の面接を控えた人と保護者に向けて、研究と公的な資料で確かめたことをまとめます。
- 模擬面接の練習ソフトやAIで練習した研究で、何が変わり、何が変わらなかったか
- AIの採点や講評を、どこまで信じてよいか
- 想定問答をAIに作らせるときの利点と危険
- 声に出す練習(音声での会話)でできること、できないこと
- 学校や大学が、生成AIの利用をどう定めているか
このページで扱うのは、声に出して答える練習と、想定される質問と答えの準備です。志望理由書や自己PRの文章をAIにどう手伝わせるかは扱いません。文章の話は文章を書くときの使い方に、勉強全般での使い方は学習・受験でどう使うかにまとめています。
先に、研究の読み方を一つだけ書いておきます。AIの研究は、使われたモデルの版と時期で結果が変わります。このページでは、研究ごとに「どのAIを、いつ、誰に使ったか」を書きます。今のサービスに同じ結果が当てはまるとは限りません。その前提で読んでください。
AIや模擬面接ソフトで練習すると、面接はうまくなるのか
まず、練習が何を変えうるのかを考えます。面接で緊張すると、評価は下がるのでしょうか。自分で答えた面接の不安と、面接のできの評価との関係を、これまでの研究をまとめて調べた分析があります。不安が強い人ほど、評価が低い傾向がありました。関係の強さを表す数字はマイナス0.19です(Powell et al., 2018, Canadian Journal of Behavioural Science)。
一般的な目安では小さめの数字です。ただし著者は、この分野では中くらいの大きさだと書いています。競争の激しい選考では、不安が結果を左右しうるという見方です。一方で、これは「不安な人ほど評価が低かった」という関係で、不安が原因だとまでは言えません。採用面接の研究で、入試の面接を調べたものでもありません。それでも、緊張を減らすことと、話す中身を整えることの両方が練習の目標になる、と考える材料にはなります。
では、練習の道具で面接はうまくなるのか。生成AIが広まる前から、コンピュータ上の仮想の面接官と練習するソフトが研究されてきました。決まった台本で質問し、答えに応じて評価を返す仕組みです。生成AIではありませんが、「機械の面接官と練習する」点は同じです。いちばん設計のしっかりした研究から見ます。
米国で、重い精神疾患があり就労支援を受けている90人を、くじで2つの群に分けた実験があります。54人は通常の支援に練習ソフトを加え、36人は通常の支援だけを受けました。面接の技能、自信、不安は、練習した群のほうが改善しました。ところが、9か月後までに就職した人の割合は43%と28%で、偶然とは言い切れない差(統計的に有意な差)にはなりませんでした(Smith et al., 2022, Psychiatric Services)。
著者は、支援を受けてもなかなか就職できなかった人に限ると、練習の効果が見られたと報告しています。ただし、全体では就職率の差を示せていません。練習で面接の技能が上がることと、合格や内定が増えることは別に確かめる必要がある、という結果です。
高校で行われた小さな実験もあります。自閉スペクトラム症の生徒14人を7人ずつに分け、一方の群が同じ練習ソフトで10時間練習しました。録画した模擬面接を、どちらの群か知らない評価者が採点すると、練習した群のできが良くなっていました。しかし、本人が感じる不安と自信は変わりませんでした(Genova et al., 2021, Research in Autism Spectrum Disorders)。人数が非常に少ない予備的な実験で、ここから一般の高校生に同じ結果を期待はできません。
生成AIを使った研究は、まだ数が少なく、設計も弱いものが中心です。中国の杭州で、卒業を控えた42人が「AI模擬面接」で練習した研究があります。くじで分けていない比較で、参加者も集めやすい人を集めています。練習の後、自分は就職できそうだという本人の見込みが、おおむね上がりました(Shi & Wang, 2025, Education and Information Technologies)。抄録には、使ったAIの種類や版が書かれていません。抄録は、実際の面接の場面での就職に向けた成績も良くなったと書いています。ただし、何をどう測ったのかは、本文を確認できず分かりません。
もう一つは、南米ボリビアの私立大学の3年生と4年生54人の研究です。ChatGPT-4oを「厳しく要求の多い面接官」に設定し、スペイン語の音声だけで3回練習させました。質問は、失敗から学んだこと、長所と短所など5つに固定です。練習の前後で模擬面接を録画し、表情と声を機械で分類すると、前向きな表情の割合が3.52%から14.75%に増えました。前後の差の大きさは0.48で、小さめから中くらいの間です(Grajeda et al., 2026, Behavioral Sciences)。
この研究には、比べる群がありません。著者自身も、同じ形式の面接に慣れたこと、質問を知っていたこと、部屋に慣れたことでも、同じ変化が起きうると書いています。測ったのは機械が分類した表情と声で、面接官の評価や合否ではありません。大学の倫理委員会が正式な審査を不要と判断したのは2025年9月1日で、掲載は2026年9月です。研究はこの間に行われたと考えられます。
| 研究 | 練習の道具と対象 | 変わったこと | 変わらなかった・分からないこと |
|---|---|---|---|
| Smith et al., 2022 | 台本型の練習ソフト。米国の成人90人 | 面接の技能・自信・不安 | 全体の就職率に、はっきりした差は出ず |
| Genova et al., 2021 | 台本型の練習ソフト。高校生14人 | 録画面接のでき | 本人の不安と自信 |
| Shi & Wang, 2025 | AI模擬面接(種類の記載なし)。中国の42人 | 就職できそうだという本人の見込み。抄録では実際の面接での成績も | くじで分けておらず、原因とは言い切れない |
| Grajeda et al., 2026 | ChatGPT-4o・音声。ボリビアの大学生54人 | 機械が分類した前向きな表情の割合 | 比べる群が無い。面接の評価は測っていない |
並べると、結果は割れています。練習の道具で面接の技能や話し方が良くなった、という報告はあります。しかし、本人の不安が減るとは限らず、合格や内定が増えると示した研究は、確かめた範囲ではありません。生成AIを使った研究は、どれも比べ方が弱いものでした。AIとの練習は「無いよりはよい練習の機会」と考え、それだけに頼らないのが、今の証拠から言える範囲です。
AIの採点や講評は、どこまで当てになるのか
AIに「今の答えを10点満点で採点して」と頼むと、もっともらしい点数と講評が返ってきます。その点数は、人の面接官の評価とどのくらい合うのでしょうか。生成AIで答えを採点した研究で、人の評価との一致を確かめたものは、この記事を書く時点で原典まで確かめられませんでした。そこで、生成AI以前の自動評価の研究から、手がかりを拾います。
米国のマサチューセッツ工科大学で、インターンを目指す学部生69人の模擬面接138回を録画した研究があります。評価者9人の採点を正解として、表情、言葉、声の高さや間の取り方から、評価を機械で予測しました。熱意、親しみやすさ、関与の度合いなど一部の印象は、人の評価との相関が0.70以上でした(Naim et al., 2018, IEEE Transactions on Affective Computing)。かなり強い関係です。
同じ研究は、最初の質問で高く評価された学生は、全体でも高く評価されていたと報告しています。なめらかに話す、「えー」のようなつなぎの言葉を減らす、笑顔を増やす、といった助言も導いています。ただし、これは英語の、一つの大学の学生の結果です。合うのは一部の印象の項目で、答えの中身の良し悪しではありません。
もう一つは、録画式の面接から性格を自動で判定する仕組みを調べた研究です。3つの標本、合わせて1,073人の模擬面接で仕組みを作り、別の99人で、時間をおいても同じ判定が出るかを確かめました。面接官の評価を手本に学習させた仕組みでも、判定の安定性の証拠はまちまちでした。本人の自己評価を手本にした仕組みは、ほとんど当てになりませんでした(Hickman et al., 2022, Journal of Applied Psychology)。
2つを合わせると、機械の評価は、項目によっては人とよく合い、項目によっては不安定です。そして今の生成AIの採点は、また別の仕組みです。AIが付けた点数は、人の面接官の点数の代わりにはならないと考えてください。点数よりも、「どの答えのどこが分かりにくかったか」という指摘のほうが、自分で確かめられる分だけ役に立ちます。
講評にはもう一つ、注意すべき癖があります。米国の研究者が、GPT-3.5-Turboで質問し、GPT-4-0613で講評を返す練習の仕組みを作り、19人に使ってもらいました。内訳は大学生9人と、学生でない人10人です。答えに合わせて追加の質問をしてくれる点は、好評でした。19人のうち17人は、これで次の面接に十分備えられると感じていました(Daryanto et al., 2025, Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction)。
一方で、参加者の1人は、AIの面接官が追加の質問をするとき、どの答えにも好意的に反応しすぎると感じていました。練習の後の講評は、良い点から始めるよう研究者が指示して作られていました。講評に反論すると、AIがそのまま同意してしまった、という参加者もいました。著者はこれを、言語モデルが相手に合わせて同意しやすい性質の表れだと書いています。この研究は19人の感想を聞いたもので、面接がうまくなったかは測っていません。
家庭でできる対策は2つです。1つ目は、AIに「褒めずに、弱い点だけを3つ挙げて」と、否定を求める形で頼むことです。2つ目は、AIの講評に納得できないとき、AIを言い負かして終わりにしないことです。先生や家族など、人の聞き手に同じ答えを聞いてもらい、どちらが当たっているかを確かめてください。
想定問答をAIに作らせるとき、何に気をつけるか
「志望理由は」「高校で力を入れたことは」「最近気になったニュースは」。面接でよく聞かれる質問の一覧は、AIに頼めばすぐに出てきます。出願書類を渡して「この内容から、面接官が聞きそうな質問を挙げて」と頼むこともできます。自分では思いつかない角度の質問が出てくるのは、AIを使う大きな利点です。追加の質問を出させれば、答えを掘り下げられたときの練習にもなります。
危険が大きいのは、答えのほうをAIに作らせて覚えることです。これを直接確かめた研究に近いものとして、録画式の面接にAIの答えを使わせた実験があります。オンライン調査会社に登録した245人を、くじで3つの条件に分けました。AIを使わない条件、AIが作った答えをそのまま読み上げる条件、自分の経歴を渡してAIの答えを手直しする条件です(Canagasuriam & Lukacik, 2024, International Journal of Selection and Assessment)。
AIを使った2つの条件は、全体の評価と、答えの中身の評価が、かなり高くなりました。ところが、話し方の評価は条件の間で変わりませんでした。そして、AIを使った条件は、正直さの評価が低くなりました。中身は整っても、話し方は良くならず、正直そうには見えにくくなったのです。抄録には、使ったChatGPTの版と実施時期が書かれていません。本番の最中にAIの答えを読む「不正」を調べた実験で、事前の練習を調べたものではない点にも注意してください。
面接練習で、AIの答えを丸暗記すると逆効果になる、と直接確かめた研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。ここから先は、この記事の提案です。理由は3つあります。1つ目に、上の実験では、整った答えでも話し方の評価は上がりませんでした。2つ目に、面接官は答えに続けて「それはなぜ」「具体的には」と聞きます。覚えた文章の外に出る質問には、覚えた文章では答えられません。3つ目に、総合型選抜の面接は、出願書類に書いた本人の経験を確かめる場でもあります。
- 質問はAIに出させる——出願書類や志望先の公式資料を自分で読んだうえで、「面接官が聞きそうな質問を20個」と頼みます。
- 答えの材料は自分で書く——文章ではなく、経験した事実、そのとき考えたこと、これから学びたいことを箇条書きにします。
- 声に出して答える——材料だけを見て、1問60秒を目安に話します。目安の秒数は、この記事の提案です。
- AIに追加の質問をさせる——「今の答えに、面接官ならどう突っ込むか」と聞き、それにも声で答えます。
- 弱い点を聞く——「分かりにくかった所」「根拠が足りない所」を挙げさせ、材料のメモを直します。
- 2回目は材料を見ずに答える——言い回しが毎回少し違ってかまいません。中身が同じなら十分です。
この手順そのものの効果を確かめた実験はありません。考え方の土台は、答えの文章ではなく、答えの中身を自分の中に置くことです。AIの出した模範解答は、「こういう構成もある」と見比べる材料にとどめてください。志望理由書の文章をAIとどう作るかは、文章を書くときの使い方で扱っています。
もう一つ、AIが出す質問の一覧にも限界があります。AIは一般によく聞かれる質問を並べますが、その大学・学部の面接で何が問われるかは知りません。志望先の募集要項やアドミッション・ポリシーは、自分で公式サイトを読んでください。AIが「この大学ではこう聞かれる」と言い切った内容は、確かめるまでは信じないでください。
声に出す練習:音声での会話でできること、できないこと
面接は話す試験です。頭の中で答えを組み立てるのと、声に出して話し切るのとでは、別の力を使います。最近の生成AIには、文字を打たずに声で会話できる機能が付いています。研究で使われた仕組みも、声でのやりとりが増えています。上で紹介したボリビアの研究は、ChatGPT-4oと音声だけで練習させていました(Grajeda et al., 2026, Behavioral Sciences)。19人の研究の仕組みも、質問を音声で読み上げ、答えの声を文字に起こしていました(Daryanto et al., 2025, Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction)。
声に出すことには、記憶の面でも手がかりがあります。黙って読んだ単語より、声に出して読んだ単語のほうがよく覚えている、という現象です。8つの実験で、条件を変えながら調べられています(MacLeod et al., 2010, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition)。ただし、この効果は、声に出す語と出さない語を混ぜたときに限って見られました。単語の記憶の実験で、面接がうまくなるかを調べたものではありません。
文字入力と声での練習を比べた、日本の研究もあります。獨協医科大学病院の研修医20人が、医師として患者に話を聞く練習をしました。AIが演じる患者にはキーボードで入力し、人が演じる患者とは声で話しました。期間は2024年4月から2025年1月です。6段階の評価で、対話と気配りの点は、AI相手の場が4.48、人相手の場が4.95で、AI相手のほうが低くなりました(Hirosawa et al., 2025, JMIR Medical Education)。
著者は、文字入力と声での会話という違いそのものが、対話の評価に影響した可能性を挙げています。医師が質問する側の練習で、入試や採用の面接とは立場が逆です。ただし、比べた2つの場は、文字か声かのほかに、相手がAIか人か、症例も違いました。測ったのはその場のできで、練習の後に上達したかではありません。それでも、文字だけのやりとりでは、話し方の練習にはなりにくい可能性を示す材料にはなります。AIと練習するなら、できるだけ音声で答えてください。
音声での練習にも限界があります。1つ目は、文字起こしの誤りです。米国で、大手5社の音声認識が、インタビューの録音をどれだけ正しく文字にできるかを調べた研究があります。話し手は白人42人と黒人73人で、録音は合わせて19.8時間です。誤りの割合は平均で、白人の話し手が100語あたり19語、黒人の話し手が35語に当たりました(Koenecke et al., 2020, Proceedings of the National Academy of Sciences)。
これは2020年に発表された、英語の製品の結果で、日本語や今の製品には当てはまらないかもしれません。分かるのは、話し方や声によって、聞き取りの正確さが大きく変わりうるということです。AIが「話の内容が分かりにくい」と言ったとき、原因が自分の話し方なのか、文字起こしの誤りなのかは、画面の文字を見て確かめてください。
2つ目は、AIの面接官には人の圧力が無いことです。19人の研究でも、2人が、練習の場は圧力が少なく、人との練習もやはり必要だと答えていました。ボリビアの研究の著者も、模擬の面接では本番の圧力や予想外の展開を再現しきれないと書いています。3つ目に、AIは声の大きさ、目線、姿勢、部屋に入るときの振る舞いを、人と同じようには見ていません。
そこで、声の練習は次のように組み合わせることを提案します。この組み合わせの効果を確かめた研究はありません。
| 練習 | 相手 | ねらい |
|---|---|---|
| 質問への答えを声に出す | AI(音声) | 回数をこなす。追加の質問に慣れる |
| 自分の答えを録音して聞き直す | 自分 | 話す速さ、言いよどみ、結論の位置を確かめる |
| 本番に近い形での模擬面接 | 先生・家族・先輩 | 人の前での緊張、目線、入退室を含めて確かめる |
録音を聞き直すときは、3つの観点に絞ると続けやすくなります。結論を最初に言えているか、1つの答えが長すぎないか、同じ口ぐせが続いていないか、です。この観点も、この記事の提案です。英語の面接がある人は、文部科学省のガイドラインが、AIを英会話の相手として使う例を挙げていることも参考になります。中学校の授業で、音声入力を使い、自分の発音がある程度正しいかを確かめた実践例も載っています(文部科学省, 2024a)。
学校と大学は、AIの利用をどう定めているか
まず、面接そのものの位置づけです。文部科学省が2026年5月27日に通知した2027年度の大学入学者選抜実施要項は、総合型選抜と学校推薦型選抜で、面接による評価を必ず行うとしています(学校推薦型のうち、高校と連携した非公募で入学を確約するものは、大学が要否を判断できます)。ここでの面接には、ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問、オンラインでの実施も含まれます。ただし、前の年度から実施していた区分で、すぐの導入が難しいものは、遅くとも2029年度入学者の選抜(実施はその前の年度)までに導入すればよいとされています(文部科学省, 2026)。制度の詳しい話は学習・受験でどう使うかにまとめています。
次に、生成AIの扱いです。文部科学省は2024年8月1日に公表した資料で、入試での生成AIの扱いは、各大学が教育での方針と合わせてルールを決めることを期待しています。出願時や選抜時の扱いを募集要項などで示す方法を例に挙げ、3つの大学の対応例を載せています(文部科学省, 2024b)。例はどれも出願書類についてのもので、面接の練習には触れていません。
大学ごとの方針は、大きく違います。東京農工大学は2024年12月18日付けで、出願書類などで生成AIを使ったかどうかは問わず、作った内容の責任はすべて出願者本人が負う、としています。そのうえで、出願書類に加えて、学力検査や口頭試問などを組み合わせて評価すると書いています(東京農工大学, 2024)。日本大学は2026年4月1日付けで、特段の指示がない限り、入学者選抜で受験生が生成AIを使うことは認めない、としています(日本大学, 2026)。
確かめた国の資料と2つの大学の公表文には、面接の練習にAIを使うことについての記述は見当たりませんでした。2026年10月に確認した範囲です。練習は試験の外で行うものですが、方針の書き方は大学によって違います。受ける大学の募集要項と、生成AIについての公表文を、自分で読んでください。分からなければ、大学の入試担当の窓口に聞くのが確実です。
中学生と高校生が学校の内外でAIを使う場合は、文部科学省の初等中等教育向けガイドラインVer.2.0も参考になります。2024年12月26日公表で、使ってよいかどうかは各学校が実態に即して判断するとされています。サービスごとの年齢制限などの利用条件を守ること、プロンプト(AIへの指示の文)に氏名や写真などの個人情報を入れないことが書かれています(文部科学省, 2024a)。面接練習のために出願書類をAIに渡すときも、氏名、学校名、住所などは消してから渡してください。
同じガイドラインは、課題を評価に使う場合の工夫として、口頭発表の機会を設けることや、まとめた内容が自分のものになっているかを確かめる活動を挙げています。書いたものについて、本人の口で説明できるかを確かめるという考え方です。面接も、出願書類に書いたことを本人が説明できるかを見る場になりえます。練習でも、その準備を中心に置いてください。
やってはいけない使い方
- AIが作った模範解答を丸暗記する——掘り下げる質問に答えられなくなります。AIの答えを読んだ実験では、正直さの評価が下がりました。
- していない経験を、AIと一緒に話の中に足す——話を盛った部分は、追加の質問で説明できません。出願書類と食い違えば、全体の信用を失います。
- 本番中にAIを使う——オンライン面接でも、画面の外でAIの答えを見ることは、試験のきまりに反するおそれがあります。
- AIの点数だけで仕上がりを判断する——AIは相手に合わせて同意しやすい性質があり、人の面接官の評価と合う保証はありません。
- 個人情報をそのまま入力する——氏名、学校名、住所、顔写真は渡さずに練習できます。
- AIが言う「その大学の傾向」をそのまま信じる——募集要項と大学の公式発表で確かめます。
2番目と3番目は、AIを使うかどうかに関わらず、面接での線が同じです。していない経験は、自分の経験ではありません。本番で自分以外の助けを借りることも、多くの試験で認められていません。AIはその線を越えるのを簡単にするだけで、線そのものは変わりません。
4番目について、もう一言足します。AIとの練習で気持ちよく答えられたことは、自信になります。それ自体は悪いことではありません。ただ、AIの面接官は優しすぎると感じた参加者がいたこと、反論するとAIが同意しやすいことが報告されています。AIで練習を重ねたら、最後の数回は人の前で話すことを勧めます。
このページの限界
紹介した研究の多くは、採用の面接、または面接の練習ソフトを対象にしたものです。日本の大学入試の面接で、AIとの練習が合否にどう影響するかを調べた研究は見つかりませんでした。研究の参加者は、米国の重い精神疾患のある成人、米国の自閉スペクトラム症の高校生、中国の卒業予定者、ボリビアの大学生、米国の大学の学生などです。日本の中高生や大学生に、同じ結果が当てはまるとは限りません。日本の研究として紹介したのは研修医の医療面接の練習で、立場も目的も違います。
生成AIを使った研究は、比べる群が無い、人数が少ない、本人の感想を聞いた、といった弱い設計が中心です。使われたAIは、ChatGPT-4o、GPT-3.5-TurboとGPT-4-0613、研修医の研究のGPTs(ChatGPTを用途に合わせて設定したもの)などで、版が書かれていない研究もありました。今のサービスとは版も機能も違う可能性があります。音声認識の研究は2020年に発表された、英語の製品の結果です。
想定問答の作り方、声の練習の組み合わせ、1問60秒や録音の3つの観点などは、研究と公的資料から考えた提案で、効果は実験で確かめられていません。大学の方針と国の資料は、2026年10月に確認した内容です。改訂されることがあるため、受ける年度の公式資料で確かめてください。
出典
- Powell, D. M. et al. (2018). Meta-analysis of the relation between interview anxiety and interview performance. Canadian Journal of Behavioural Science. doi:10.1037/cbs0000108
- Smith, M. J. et al. (2022). An RCT of Virtual Reality Job Interview Training for Individuals With Serious Mental Illness in IPS Supported Employment. Psychiatric Services. doi:10.1176/appi.ps.202100516
- Genova, H. M. et al. (2021). A pilot RCT of virtual reality job interview training in transition-age youth on the autism spectrum. Research in Autism Spectrum Disorders. doi:10.1016/j.rasd.2021.101878
- Shi, W. & Wang, D. (2025). Empirical research on the application of AI mock interviews in enhancing graduate perceived employability: a case study in Hangzhou, China. Education and Information Technologies. doi:10.1007/s10639-025-13525-5
- Grajeda, A. et al. (2026). Changes in Emotional and Vocal Expression in Job Interview Simulations with an AI-Enhanced Chatbot for University Students. Behavioral Sciences. doi:10.3390/bs16091554
- Daryanto, T. et al. (2025). Conversate: Supporting Reflective Learning in Interview Practice Through Interactive Simulation and Dialogic Feedback. Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction. doi:10.1145/3701188
- Naim, I. et al. (2018). Automated Analysis and Prediction of Job Interview Performance. IEEE Transactions on Affective Computing. doi:10.1109/taffc.2016.2614299
- Hickman, L. et al. (2022). Automated video interview personality assessments: Reliability, validity, and generalizability investigations. Journal of Applied Psychology. doi:10.1037/apl0000695
- Canagasuriam, D. & Lukacik, E. R. (2024). ChatGPT, can you take my job interview? Examining artificial intelligence cheating in the asynchronous video interview. International Journal of Selection and Assessment. doi:10.1111/ijsa.12491
- MacLeod, C. M. et al. (2010). The production effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. doi:10.1037/a0018785
- Hirosawa, T. et al. (2025). Utility of Generative Artificial Intelligence for Japanese Medical Interview Training: Randomized Crossover Pilot Study. JMIR Medical Education. doi:10.2196/77332
- Koenecke, A. et al. (2020). Racial disparities in automated speech recognition. Proceedings of the National Academy of Sciences. doi:10.1073/pnas.1915768117
- 文部科学省 (2024a). 初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0(2024年12月26日公表、2026年10月確認). ガイドライン原本
- 文部科学省 (2024b). 大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて(2024年8月1日掲載、2026年10月確認). 入学者選抜での生成AIの取扱いの資料
- 文部科学省 (2026). 令和9年度大学入学者選抜実施要項(2027年度対象、2026年5月27日通知). 実施要項原本
- 東京農工大学 (2024). 出願書類等における生成AIの取扱いについて(2024年12月18日、2026年10月確認). 出願書類に関する方針
- 日本大学 (2026). 入学者選抜における生成AIツールの取扱いについて(2026年4月1日、2026年10月確認). 入学者選抜に関する方針
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この記事のまとめ
- 練習ソフトで面接の技能が上がったという研究はありますが、合格や内定が増えると示した研究はありません。
- 生成AIとの練習の研究は、比べる群が無いなど設計が弱く、結果も割れています。
- AIの点数は人の面接官の代わりになりません。弱い点を挙げさせる使い方のほうが確かめやすくなります。
- 質問はAIに出させ、答えの材料は自分で書き、声に出して答える順番を提案します。
- AIの模範解答を覚えると、掘り下げる質問に答えにくくなります。読み上げた実験では正直さの評価が下がりました。
- 文字で打つより声で話す練習を選び、最後は人の前で話して確かめます。
- 受ける大学の募集要項と生成AIの方針を、自分で読んで確かめます。
よくある質問
生成AIと面接の練習をすれば、面接はうまくなりますか?
練習の道具で面接の技能や話し方が良くなったという研究はあります。ただし、本人の不安が減るとは限らず、合格や内定が増えると示した研究はありません。米国の90人の比較試験では、面接の技能は改善しましたが、就職率の差ははっきりしませんでした。生成AIを使った研究は、比べる群が無いなど設計が弱いものが中心です(Smith et al., 2022; Grajeda et al., 2026)。
AIに付けてもらった点数は、本番の評価の目安になりますか?
目安にはしにくいと考えてください。機械による評価は、項目によっては人の評価とよく合う一方、判定が安定しない項目もありました。AIの面接官は答えに好意的すぎると感じた参加者や、反論するとAIがすぐ同意する場面も報告されています(Naim et al., 2018; Hickman et al., 2022; Daryanto et al., 2025)。
AIに模範解答を作ってもらい、覚えて本番に臨んでもよいですか?
勧められません。録画式の面接でAIの答えを使わせた実験では、答えの中身の評価は上がりましたが、話し方の評価は変わらず、正直さの評価は下がりました。本番中に読み上げる実験で、練習の研究ではありませんが、掘り下げる質問に答えられなくなるおそれもあります(Canagasuriam & Lukacik, 2024)。
文字で打つ練習と、声で話す練習はどちらがよいですか?
面接は話す試験なので、声で答える練習を勧めます。日本の研修医20人の研究では、文字入力でAIと練習した場は、人と声で話した場より対話の評価が低くなりました。ただし、比べた2つの場は、相手がAIか人か、症例も違いました。音声の文字起こしには誤りもあるため、画面の文字を確かめてください(Hirosawa et al., 2025; Koenecke et al., 2020)。
面接の練習にAIを使うことは、大学に禁止されていませんか?
確かめた国の資料と2つの大学の公表文には、面接の練習にAIを使うことについての記述は見当たりませんでした。ただし、入学者選抜での生成AIの使用を原則認めない大学もあり、方針は大学ごとに違います。受ける大学の募集要項と公表文を確かめてください(文部科学省, 2024b; 日本大学, 2026)。