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文章にどう使うか——丸ごと書かせない

生成AIに丸ごと書かせれば文章は手に入りますが、書く練習にはなりません。作文・読書感想文・レポート・小論文・志望理由書について、研究と公的な資料を読み、先に自分で書き、AIには弱点を聞く使い方を考えます。

この記事の要点

丸ごと書かせると、何が残らないのか

夏休みの終わりに、読書感想文の原稿用紙が白いまま残っている。生成AIに本の題名を伝えて「感想文を書いて」と頼めば、マス目を埋める文章はすぐに出てきます。困るのはその先です。文章は手元に残っても、書く練習は手元に残りません。この記事では、作文・読書感想文・レポート・小論文・志望理由書を書くときの使い方を、研究と公的な資料で確かめます。

指示だけ与えて全文を出力させた文章には、次の弱点が考えられます。どれも、書き手が考える工程を通っていないことから来るものです。

仕事の文章なら、話は少し違います。大卒の社会人453人に、職種に合わせた文章課題を出した実験があります。半数をChatGPTが使える条件にしたところ、かかった時間は平均で40%短くなり、文章の評価は18%上がりました。掲載は2023年7月ですが、著者は同じ実験の途中までの結果を2023年3月2日付の作業論文で出しています。使われたのは2023年初めのChatGPTで、版の名前は抄録に書かれていません。参加者の国も抄録には書かれていません(Noy & Zhang, 2023, Science)。

ただし、この実験が測ったのは「早く、よい成果物ができたか」です。書いた人の文章力が伸びたかどうかは測っていません。仕事では成果物が目的ですが、作文やレポートでは、書く過程で身につく力のほうが目的です。同じ道具でも、目的が違えば評価が変わります。

学びの場面を調べた実験もあります。英語が第二言語の大学生117人が、英語の文章を読んで作文を書き、書き直しました。支援は、ChatGPT 4.0、人の専門家、文章分析ツール、支援なしの4通りです。ただし、このChatGPTは作文を代わりに書かず、助言だけを返すように設定されていました。1群は25〜35人です。作文の得点は、ChatGPTの群がいちばん伸びました。しかし、内容についての知識と、別の課題に応用する力には、群の間で差が見られませんでした(Fan et al., 2025, British Journal of Educational Technology)。

この実験は2023年の7月から9月に行われた、1回きりの課題です。著者は中国の北京大学などの研究者で、参加者の国は論文で伏せられています。「差が見られなかった」は、「差が無いと証明された」という意味でもありません。助言だけのAIでも、作文の点が上がることと、本人の中に何かが残ることは別だった——と考える材料になります。この実験は学習・受験でどう使うかでも取り上げています。

書くもの読む人が見たいもの本人に残したいもの
仕事の報告やメール正確で、早く読める内容成果物そのもの
読書感想文その本を読んだ本人の感想読んで感じたことを言葉にする力
レポート調べた事実と、そこからの考え調べ、確かめ、筋道を立てる力
小論文主張と根拠のつながり試験場で、何も見ずに組み立てる力
志望理由書本人の経験と、志望先とのつながり面接で自分の言葉で話せる中身

書くことそのものが、勉強になるのか

「どうせ書くなら、AIに任せて時間を浮かせたい」と思うこともあるでしょう。その前に、書く作業が何を生むかを確かめておきます。理科・社会・算数や数学の授業で、学んだ内容について文章を書かせた56の実験をまとめた分析があります。対象は1年生から12年生、日本でいう小学1年から高校3年に当たる学年です。

結果は、書かせたクラスのほうが学習の成果が高い、というものでした。効果の大きさを表す数字は0.30です。0.2前後で小さい、0.5前後で中くらいと読む目安に照らすと、小さめの効果です。教科による違いも、小・中・高による違いも見られませんでした(Graham et al., 2020, Review of Educational Research)。

もっと前の分析も、向きは同じで、控えめです。学校で行われた「書いて学ぶ」取り組み48件をまとめたところ、成績への効果は小さいがプラスでした。自分の理解を振り返らせる問いを添えた場合と、長く続けた場合に、効果が大きくなっていました。逆に、6年生から8年生での実施と、長い文章を書かせる課題では、効果が小さくなっていました(Bangert-Drowns et al., 2004, Review of Educational Research)。ただし、新しい2020年の分析では、書かせ方や課題の違いで効果は変わりませんでした。どんな書かせ方が効くかは、まだはっきりしていません。

2020年の分析は英語で発表された研究を集めたもので、どちらもAIが登場する前の授業が対象です。国語の作文力を直接測ったものでもありません。「書けば成績が大きく上がる」とは読めません。長く書かせれば効くわけでもない、という結果も含まれています。

それでも分かることがあります。学んだことを自分の言葉で書く作業は、小さいながら学びを助けていました。AIに丸ごと書かせると、その作業を本人がしないことになります。ここは実験で直接確かめられた点ではなく、上の結果からの推測です。浮いた時間と引き換えに、何を手放すのかを知ったうえで決めてください。

AIの助けで書くと、文章は似てくるのか

クラスの全員が同じAIに相談して感想文を書いたら、どうなるでしょうか。これに近い実験が英国で行われています。成人293人に、8文の短い物語を書いてもらいました。一部の人は、GPT-4が出す3文の「物語の案」を、1つまたは最大5つまで見ることができました。できた物語は、別の600人が評価しました(Doshi & Hauser, 2024, Science Advances)。

AIの案を見られた人の物語は、評価が上がりました。新しさの評価は、案を1つ見られる群で5.4%、5つまで見られる群で8.1%高くなっています。もともと創造性の検査の点が低かった書き手ほど、伸びが大きくなりました。ここだけ見れば、AIは書き手の助けになっています。

ところが、物語どうしを比べると、別の面が見えます。AIの案を見た人たちの物語は、互いに似ていました。AIなしの群の物語どうしの似かたは、点数で8.10の幅に散らばっていました。案を1つ見られる群では、似かたがその幅の10.7%ぶん、5つまで見られる群では8.9%ぶん増えました。著者はこれを、1人ずつは得をするが、全体としては内容の幅が狭くなる状況だと説明しています。

これは大人が書いた8文の物語の実験で、子どもの作文や長い文章ではありません。似かたの増え方も、劇的な大きさではありません。著者自身も、使ったGPT-4はすぐ古くなりうると書いています。今の製品に同じ数字が当てはまるとは限りません。

読書感想文や志望理由書に置き換えると、注意点は1つです。読む人は、同じ課題の文章を何本も続けて読みます。AIの案から書き始めた文章が並べば、似た切り口が重なるかもしれません。書き出しと切り口だけは、AIを開く前に自分で決めるという方法が考えられます。

効く手順:構造を先に自分で作る

ここまでの研究を踏まえて、自分が考える工程を残す手順を提案します。この手順そのものの効果を確かめた実験はありません。学校の課題や出願書類では、先に利用のきまりを確かめてください。

  1. 何を言いたいかを一文で書く——ここは自分でやります。ここがないと、全体が空洞になります。
  2. 見出しだけ並べる——話の順番を自分で決めます。
  3. 各見出しに入れる材料をメモする——具体例、数字、自分の経験です。
  4. ここでAIに渡す——「この構成で書いて」ではなく、「この構成の弱点は」から始めます。
  5. 本文を書く——学校の課題や出願書類では、自分で書きます。仕事の文章でAIに下書きさせる場合も、具体は自分で入れます。
  6. 整える段階でAIを使う——重複、長すぎる文、語調の揺れを指摘させます。

4番目が要点です。書かせる前に、検討させる。構成の穴を先に指摘してもらえば、何を書くかを決めるのは自分のままです。読書感想文なら、1番目は「この本のどこで、何を感じたか」になります。ここをAIに聞いてしまうと、感想文の中心が他人のものになります。

文部科学省のガイドラインにも、近い使い方が活用例として載っています。自分で作った文章をAIに修正させ、それを「たたき台」にして何度も推敲する、という例です。AIの使い方を学ぶ目的の例として、直した過程と結果をワープロソフトの校閲機能で示して提出させる、という形が挙げられています(文部科学省, 2024)。AIの修正を受け入れるかどうかを、本人が1つずつ判断する形です。

いちばん使える聞き方は、否定を求める形

自分の下書きができたら、次のように聞きます。どれも、AIに書かせるのではなく、自分の文章の弱いところを探させる聞き方です。

聞き方得たいもの
この主張へのいちばん強い反論は自分では思いつかない角度。小論文の再反論の練習になります
この文章の弱点を3つ挙げて構成の穴。褒めてもらうより役に立ちます
読む人がここで疑問に思うのはどこか説明が足りていない箇所
要らないかもしれない段落はどれか話の重複や脱線
ここで前提にしていることは何か書かずに済ませている前提
同じことを半分の長さで言うとどこが中心かの確認

「よく書けていますか」と聞いて褒め言葉が返ってきても、直す場所は分かりません。否定を求める形で聞くほうが、次の作業が決まります。返ってきた指摘が当たっているかどうかは、自分で判断します。指摘のすべてを採用する必要はありません。採用しなかった理由を言えるなら、それも考えた証拠です。

AIの添削は、人の添削の代わりになるのか

先生に作文を見てもらえる機会は限られます。AIなら夜中でも返事が来ます。では、その助言の質はどうでしょうか。まず、助言(フィードバック)一般について分かっていることを確かめます。

フィードバックは学習への影響が大きい一方で、プラスにもマイナスにも働きます。どんな種類の助言を、どう伝えるかで効き方が変わる、という整理が知られています(Hattie & Timperley, 2007, Review of Educational Research)。その後、435の研究、合わせて61,000人を超える参加者をまとめた分析が出ました。極端な値を除いた効果の大きさは0.48で、中くらいです。ただし、除く前の集計では、集めた効果のうち17%がマイナスでした。効果は、助言に含まれる情報の中身で大きく変わります(Wisniewski et al., 2020, Frontiers in Psychology)。

つまり、「助言をもらえば伸びる」とは言えません。中身のある助言かどうかが問題です。そこで、AIの助言の質を人と比べた研究を3つ見ます。使われたAIの版と、比べた相手が、それぞれ違います。

研究対象とAI比べた相手結果
Steiss et al., 2024米国の6年生から12年生の作文200本。ChatGPTのv.3.5よく訓練された人の助言5つの観点のうち4つで、人の助言の質が上
Escalante et al., 2023英語を学ぶ大学生48人、6週間。GPT-4人のチューターの助言学習の成果に差は出ず
Meyer et al., 2024英語を外国語として学ぶ高校段階の生徒459人。GPT-3.5-turbo助言なし書き直しの出来が少し上

1つ目は、米国の南カリフォルニアの26学級で書かれた、歴史の意見文を使った研究です。同じ作文200本に、人とAIがそれぞれ助言を書き、その助言を5段階で採点しました。観点は、基準に沿っているか、直し方が分かるか、正確か、大事な点に絞れているか、励ます調子か、の5つです。「基準に沿っているか」以外は、人の助言のほうが上でした。差はどの観点でも1点以内です(Steiss et al., 2024, Learning and Instruction)。

この研究が比べたのは助言の質で、生徒の作文が伸びたかどうかではありません。著者は、訓練された先生がいない場面や、早い段階の下書きでは、AIの助言が役立つかもしれないと述べています。「正確か」「大事な点に絞れているか」で人に及ばなかった点は、覚えておいてください。AIの指摘には、的外れなものが混ざりえます。

2つ目は、大学で英語を新しい言語として学ぶ48人を、6週間追った研究です。作文への助言を、GPT-4から受ける群と、人のチューターから受ける群に分けました。学習の成果に差は出ませんでした。別の43人に好みを聞くと、AIと人でほぼ半々に分かれました(Escalante et al., 2023, International Journal of Educational Technology in Higher Education)。

この結果を「AIは人と同じ」と読むのは早すぎます。48人という人数では、小さな差は見つけにくいからです。参加者を無作為に分けた実験でもありません。著者は米国の大学の研究者で、AIと人の助言を組み合わせる形を勧めています。

3つ目は、ドイツの研究機関による実験です。英語を外国語として学ぶ高校段階の生徒459人が、意見文を書きました。一方の群はGPT-3.5-turboが作った助言を見て書き直し、もう一方は助言なしで書き直しました。助言を受けた群は、書き直しの出来(自動採点で測定)が少し良くなりました。効果の大きさは0.19で、小さな差です。やる気は0.36、前向きな気持ちは0.34で、小さめから中くらいの間の差でした(Meyer et al., 2024, Computers and Education: Artificial Intelligence)。

3つを並べると、同じ向きの結果とは言えません。助言が何も無いよりは役に立った。人のチューターとは差が出なかった。よく訓練された人には質で届かなかった。どれも1回から数週間の研究で、日本語の作文を調べたものはありません。使われたのは2023年前後の版で、今の製品に同じ結果が当てはまるとは限りません。

読者ができることは2つあります。AIの指摘は、正しいかどうかを自分で確かめてから採用してください。そして、先生や家族に見てもらえる機会があるなら、AIの助言で置き換えずに両方を使ってください。文部科学省のガイドラインも、教師が評価すべき場面でAIの出力だけに頼ることを、不適切な例に挙げています(文部科学省, 2024)。

文体を保つには、自分の文を手元に残す

AIに整えてもらった文章を読み返すと、「自分の文ではない」と感じることがあります。整える前の文を消さずに残し、次の点を見比べてください。

当てはまる箇所は、元の文に戻すか、自分で書き直します。自分の過去の文章を渡して「この文体で」と指定する方法もあります。ただし、うまくいくとは限りません。渡す文章に氏名や学校名が入っていないかも確かめてください。最後は自分で音読し、引っかかる所を直すことになります。

志望理由書では、この確認が特に大事です。自分が普段使わない言い回しは、面接で同じ調子では話せません。整った言葉より、自分が説明できる言葉を選んでください。

推敲だけに使うのは、確かめやすい使い方

すべて自分で書いたうえで、推敲の手伝いだけをAIに頼む使い方もあります。頼むのは、次のような点の指摘です。

この用途は確かめやすいのが利点です。指摘された箇所を自分で読めば、直すべきかどうかを判断できます。直した文をそのまま受け取るのではなく、「どこが、なぜ問題か」を挙げさせると、次に自分で気づく手がかりになります。

注意点もあります。推敲のつもりで「読みやすくして」と頼むと、言い回しだけでなく内容まで書き換わることがあります。経験した事実や数字が変わっていないかを、元の文と照らしてください。学校の課題では、推敲に使ってよいかどうかも先生に確かめます。

読書感想文・レポート・小論文・志望理由書で、任せてよい工程は違う

同じ「文章」でも、求められているものが違います。課題ごとに、自分でやる工程と、AIに頼める工程を分けて考えます。次の表は、学校やコンクール、出願先がAIの利用を認めている場合の整理です。

課題自分でやる工程AIに頼める候補
読書感想文本を読む。心が動いた場面と理由を書き出す。本文を書く書いた後に、分かりにくい箇所の指摘を受ける
レポート問いを立てる。資料を読む。事実を確かめる。本文を書く調べる言葉の候補を出させる。構成の弱点を聞く
小論文主張と根拠を決める。時間を計って書く書いた後に、反論と弱点を出させる
志望理由書経験を思い出す。志望先を公式資料で調べる。本文を書く経験と志望のつながりが弱い所を聞く

読書感想文。青少年読書感想文全国コンクールの第72回の応募要項を確かめました。字数は、小学校中学年と高学年が本文1,200字以内、中学校と高等学校が本文2,000字以内です。原稿用紙に縦書きで自筆すること、個人のオリジナルで未発表の作品に限ることが定められています。応募要項のページに、生成AIについての記述は見当たりませんでした(全国学校図書館協議会, 2026)。2026年10月に確認した内容です。

書かれていないことは、使ってよいという意味ではありません。文部科学省のガイドラインは、AIの出力をそのまま自分の作品として応募することに注意を促しています。応募規約によっては、不適切または不正な行為に当たるからです。初めて読んだときの感想を求める場面で安易に使わせることも、不適切な例に挙げています(文部科学省, 2024)。感想は、AIに聞く前に自分でメモしてください。

レポート。調べた事実が土台になります。AIが挙げた事実や出典は、そのまま写さず、元の資料で確かめます。確かめ方は調べ物での使い方にまとめました。ガイドラインは、レポートを評価する視点の例を挙げています。自分の経験を踏まえているか、学習活動を踏まえているか、事実関係に誤りがないか、の3点です(文部科学省, 2024)。

小論文。入試の小論文は、試験場で何も見ずに書きます。練習の段階でAIに構成を任せると、本番で使う力を練習しないことになります。時間を計って自分で書き、書いた後で反論と弱点を出させる順番にしてください。出された反論に答える一段落を、自分で書き足すところまでを練習にします。

志望理由書。出願先によって、AIの利用を認めるかどうかが違います。大学ごとの方針と面接の制度は、学習・受験でどう使うかで確かめた資料を紹介しています。認められている場合でも、AIが足した活動や、読んでいない本を残してはいけません。自分の経験にない一文は、面接で説明できません。

学校の課題では、何を残しておけばよいのか

2026年10月に確認した時点で、文部科学省が案内している現行版は、2024年12月26日のガイドラインVer.2.0です。学校関係者向けの資料で、使ってよいかどうかは各学校が実態に即して判断するとされています。家庭では、まず学校や担当の先生の指示を確かめてください(文部科学省, 2024)。

ガイドラインには、課題を出す側の工夫も書かれています。提出した課題を成績に反映させる場合は、クラスやグループで口頭発表の機会を設ける。まとめた内容が自分のものになっているかを確かめる活動を入れる。こうした例です。書いた文章について質問されたら答えられるか、が問われるということです。

AIを使ったときに残すものも、例が示されています。AIツールの名称、入力した文や出力、日付などを明記させる、というものです。家庭でも、これにならって記録を残せます。自分の最初の下書き、AIに聞いたこと、採用した修正の3つを取っておくと、書いた経緯を説明できます。

AI検出ツールで「自分で書いた」と示せるのか

「自分で書いたのに、AIだと疑われたらどうしよう」と心配する人もいます。英語が母語でない人の作文を、検出ツールが平均61.3%の割合でAI製と誤判定した、という2023年の論考があります(Liang et al., 2023, Patterns)。詳しくは学習・受験でどう使うかで紹介しています。

同じ論考では、人が書いたその作文のうち、調べた検出ツール7種類すべてがAI製と判定したものが19.8%、少なくとも1種類がAI製と判定したものが97.8%でした。これは2023年当時の検出器と英語の作文の結果で、日本語の文章は調べられていません。

誤判定があるからといって、きまりに反する使い方が許されるわけではありません。検出ツールを通ったことも、自分で書いた証明にはなりません。頼りになるのは、前の節で挙げた記録です。メモ、下書き、修正の理由が残っていれば、先生と一緒に経緯を確かめられます。

英作文と翻訳は、自分の英文を先に書く

英作文の宿題を日本語で書き、AIに英訳させて出す。これでは、英語で文を組み立てる練習になりません。先に自分で英文を書き、その後で「不自然な所と理由を教えて」と頼む順番にします。文部科学省のガイドラインも、より自然な英語表現への改善を、活用が考えられる例に挙げています(文部科学省, 2024)。

翻訳の正確さについて、この記事では数字で示せる資料を確かめていません。そのため、仕事や発表で訳文を使うときの注意だけを挙げます。

  1. 専門用語は確かめる——分野ごとに決まった訳語とずれることがあります。
  2. 公開する文書は、その言語が読める人に見てもらう——細かな意味合いの判断は、機械に任せきれません。
  3. 逆向きに訳して確かめる——訳文を元の言語に戻し、意味が大きく変わっていないかを見ます。小さなずれまでは見つけられません。

やってはいけない使い方

2番目は、勉強でも仕事でも線が同じです。読書感想文なら、読んでいない場面の感想は自分の感想ではありません。志望理由書なら、していない活動は自分の経験ではありません。作る手段がAIかどうかに関わらず、この線は変わりません。

仕事で使う大人には、別の注意もあります。広告なのに、広告であることを隠して第三者の感想のように見せる表示は、2023年10月1日から景品表示法違反になりました。規制の対象は事業者です(消費者庁, 2023)。AIに「お客さまの声」を作らせて載せることは、この点からも避けてください。2026年10月に確認した内容です。

3番目と4番目は、レポートで起きやすい失敗です。AIが示す出典には、実在しないものが混ざることがあります。どのくらいの割合で起きるかは、調べ物での使い方で研究を紹介しています。

この記事の限界

紹介した実験の多くは、英語で書く大人や大学生、米国の生徒、英語を外国語として学ぶ高校段階の生徒が対象です。日本語の作文、日本の小中高生、入試の合否について、同じ結果を保証するものではありません。書くことの効果をまとめた2つの分析は、AIが登場する前の授業を集めたもので、国語の作文力を測ったものでもありません。手順や聞き方の表は、これらの結果と公的な指針から考えた提案です。提案そのものの効果は、実験で確かめられていません。

AIの研究は、使われた版と時期に結果が左右されます。この記事の研究で使われたのは、2023年前後のChatGPTやGPT-4です。今の製品にそのまま当てはまるとは限りません。「差が見られなかった」という結果は、差が無いことの証明でもありません。ガイドラインと応募要項は改訂されるため、使う時点の公式資料で確かめてください。

出典

なお、当サイトの運営者は学習塾(武蔵野個別指導塾)を運営しています。子どもの勉強での使い方は、利害関係を明記したうえで学習・受験でどう使うかにまとめています。編集方針は運営者情報をご覧ください。

この記事のまとめ

よくある質問

読書感想文を生成AIに書かせて出してもよいですか?

勧められません。青少年読書感想文全国コンクールの応募要項は、自筆で、個人のオリジナルの作品であることを条件にしています。文部科学省のガイドラインも、AIの出力をほぼそのまま自分の作品として応募・提出することを不適切な例に挙げています。感想は、AIに聞く前に自分でメモしてください(全国学校図書館協議会, 2026; 文部科学省, 2024)。

AIに添削してもらえば、作文はうまくなりますか?

助言が何も無いよりは役立った、という実験があります。英語を外国語として学ぶ高校段階の生徒459人が英語の意見文を書き直した実験で、AIの助言を受けた群は書き直しの出来(自動採点で測定)が少し良くなりました。ただし差は小さく、別の研究では、よく訓練された人の助言のほうが質は上でした。どちらも2023年前後の版の結果です(Meyer et al., 2024; Steiss et al., 2024)。

AIを使うと、みんなの文章が似てくるのですか?

短い物語の実験では、その傾向が見られました。英国の成人293人の実験で、AIの案を見て書いた物語は評価が上がった一方、物語どうしは互いに似ていました。大人が書いた8文の物語での結果で、子どもの作文で確かめたものではありません(Doshi & Hauser, 2024)。

自分で書くことに、勉強としての意味はありますか?

あります。理科・社会・算数や数学で学んだ内容について書かせた56の実験をまとめた分析では、書かせたクラスのほうが学習の成果が高くなりました。効果は小さめで、AIが登場する前の授業を集めた分析です(Graham et al., 2020)。

自分で書いたのに、AI検出ツールで疑われたらどうすればよいですか?

検出ツールは誤判定をします。英語が母語でない人が書いた作文の過半を、AI製と誤って判定したという論考があります。英語の作文と2023年当時の検出器の結果です。メモ、下書き、修正の理由を残しておき、先生と経緯を確かめてください(Liang et al., 2023)。