「人間の特徴」を生成AIに絵で描かせると誰の姿ばかり出てくるのか|画像生成と偏りの研究
夏休みの発表資料を作る画面には、説明文を添える前の挿絵の空欄があります。生成AIに絵を頼むと、その空欄を埋める人物の姿まで作られます。「人間の特徴」は、体の様子や行動、考え方など、人について注目する点を広く指す言葉です。性格や職業を絵で表そうとすると、目に見えない性質にも、顔や服装などの具体的な形が与えられます。その絵に似た姿の人ばかりが出るのか、見た側もその姿を当たり前と思うようになるのかが気になるところです。
- 性別や人種を指定しない指示でも、人物像が特定の姿に寄るという報告があります。
- 画像の偏りを測るときは、実際の人口構成と比べるのか、学習に使われた画像と比べるのかを区別します。
- 見る人への影響は、画像の内容と測った偏見の種類を合わせて読みます。
- 資料に使う絵は顔ぶれを一覧にし、実在する人々の説明は出典のある写真や資料で補います。
「人間の特徴」を生成AIに絵で描かせると誰の姿ばかり出てくるのか|画像生成と偏りの研究
夏休みの発表資料を作る画面には、説明文を添える前の挿絵の空欄があります。生成AIに絵を頼むと、その空欄を埋める人物の姿まで作られます。「人間の特徴」は、体の様子や行動、考え方など、人について注目する点を広く指す言葉です。性格や職業を絵で表そうとすると、目に見えない性質にも、顔や服装などの具体的な形が与えられます。その絵に似た姿の人ばかりが出るのか、見た側もその姿を当たり前と思うようになるのかが気になるところです。
人物の描かれ方には偏りが報告されていますが、それを見る人の偏見が強まるかは研究で結果がわかれています。 自然に見える絵であっても、社会にいる人々の構成を正確に写した資料としては扱わないことが出発点です。自由研究で使うなら、描かれた顔ぶれを並べて観察し、絵が伝える印象と説明したい内容を分けて考えます。ここで扱うのは、画像が本物かどうかを見抜く技術ではなく、どんな人が目立ち、どんな人が描かれにくいかという問題です。
要点
- 性別や人種を指定しない指示でも、人物像が特定の姿に寄るという報告があります。
- 画像の偏りを測るときは、実際の人口構成と比べるのか、学習に使われた画像と比べるのかを区別します。
- 見る人への影響は、画像の内容と測った偏見の種類を合わせて読みます。
- 資料に使う絵は顔ぶれを一覧にし、実在する人々の説明は出典のある写真や資料で補います。
人間の特徴を頼んでも、描かれる姿は中立とは限りません
人種や性別を書かなければ、生成AIが広く人々を描いてくれると思うかもしれません。しかし、文章に指定がない部分も、画像では何らかの形になります。顔の印象、年齢の見え方、肌の色、服装が選ばれるため、短い指示でも人物像の選択が起きます。特に性格のような見えない内容を絵にするときは、その性質と特定の姿が結びつく点に注意を向けます。
Bianchi(2023)は、性格・役割・職業・物を表す指示から作られた画像を調べました。人種や性別に触れる語を指示に入れても、そうした語を避けても、固定観念が現れたと報告しています。固定観念とは、個人の違いを見ずに、ある集団や役割を決まった型で捉える見方です。利用者がそれと逆の像を頼む方法や、提供側の安全策を通しても、固定観念の再生産は防がれなかったという結果でした。
Naik(2023)は、DALLE-v2とStable Diffusionで、職業や性格、日常の場面の描写を調べました。性格を示す語が、見た目の人種・性別・年齢の限られた組み合わせと結びついていました。地域を指定しない場面も、米国やドイツを指定した画像に近かったと報告しています。単に顔の種類が少ないだけでなく、指定しなかった地域の生活像まで入り込むことが、抽象的な題を絵にする際の問題になります。
これらは、人物の絵が文章の意味に加えて、人物の見た目についても選択を含むことを考える材料です。たとえば説明したいのが人の行動なのに、毎回似た年齢の人物が描かれれば、その年齢と行動が結びついた印象を与える可能性があります。自由研究の原稿では、絵の見栄えを評価する前に、説明に必要な要素と、生成の際に付け加わった要素を分けて眺めます。
現実とのずれは、比べた集団と一緒に読みます
画像の顔ぶれを「偏っている」と言うには、何と比べたかが要ります。実社会の職業の構成を基準にする場合もあれば、描きたい人々を幅広く含めることを目的にする場合もあります。実際の構成を写すことと、幅広い人を紹介することは、資料の目的として区別できます。どちらを目指すのかが曖昧なままでは、画像を作り直しても良し悪しの判断が定まりません。
Luccioni(2023)が扱った対象は、職業を指示して生成した人物画像です。Dall-E 2、Stable Diffusion v1.4・v2という3つの画像生成システムの出力は、米国の労働人口の構成と関連しつつ、社会の少数派を一貫して少なく描いていました。現実との関連があることと、現実の人々を十分に表していることは両立しない場合があります。この研究は、生成された人物には実在の人のような属性があるわけではないという難しさも踏まえ、指示の語を入れ替えたときの画像の変化を評価しました。
Ali(2024)が扱った対象は、外科医を指示して生成した顔の画像です。DALL-E 2・Midjourney・Stable Diffusionによる2400枚を調べ、米国の外科医の構成と比較しました。女性の外科医として描かれた割合は、Midjourneyで0%、Stable Diffusionで1.8%、白人以外として描かれた割合はそれぞれ0.5%と0.6%でした。同じ職業の画像を頼んでも、現実の構成から大きく偏る出力があったという結果です。
| 研究 | 対象 | 比べた相手 | 研究で言えること |
|---|---|---|---|
| Luccioni(2023) | 職業を指示して生成した人物画像 | 米国の労働人口の構成 | 出力に現実との関連があっても、少数派は少なく描かれました。 |
| Ali(2024) | 外科医を指示して生成した顔の画像 | 米国の外科医の構成 | 一部のモデルで女性や白人以外の描写が実際より少なくなりました。 |
「偏りが増えた」という測定にも比べ方が関わります
現実とのずれと、学習に使った資料からの変化は、別の問いです。前者は画像が社会をどう描くかを尋ね、後者は画像を作る仕組みが元の偏りをどれだけ強めたかを尋ねます。学習用の画像と文章の集まりに偏りがあるとしても、生成後の偏りとの差を測るには比較の条件をそろえます。この違いは、研究の見出しで「増幅」という言葉を見たときの読みどころです。
Seshadri(2024)は、Stable Diffusionと、その学習に使われた画像・説明文の集まりであるLAIONの性別と職業の偏りを比べました。学習画像の説明文には性別の語が含まれることが多い一方、生成に使う指示には含まれないという違いがありました。その食い違いを考慮して比べると、偏りの増幅は大きく小さくなりました。画像に偏りがあるかという問いに加えて、増えたと判断するための基準も点検する研究です。
この結果を読む際は、補正後に小さくなったものが何かを明確にします。小さくなったのは、学習データから生成画像へ偏りが増えたと評価される程度です。もともとの学習資料の偏りや、完成した画像の顔ぶれそのものが消えたという結論ではありません。使う側にとっては、増幅の原因の説明と、手元の画像を採用する判断を分けることが役立ちます。
自由研究で生成の仕方を比べる場合も、指示文と選んだ画像の範囲を記録しておきます。ある指示では出た画像を全部残し、別の指示では好みの画像だけ選ぶと、指示の違いと選別の違いが混ざります。画像の構図まで変えた場合は、その変更も一緒に書き留めます。記録をそろえることで、どの変更の後に顔ぶれが変わったのかを説明しやすくなります。
偏った絵を見た人への影響は、研究で一致していません
画像が偏っていると示す研究と、その画像を見た人の考えが変わると示す研究では、測る対象が違います。後者では、画像の種類を変えて見せ、その後の受け取り方を比べます。似た姿の画像が並んでいるだけで、人の偏見がどれほど変わるかまで決めることは避けます。実際に人を対象にした研究には、影響を示す結果と、増加を認めない結果の両方があります。
AlDahoul(2025)は、Stable Diffusionの顔の画像の偏りを調べたうえで、画像を見せる調査実験を行いました。実験の方法や分析を先に登録する事前登録という手続きを取り、多様な顔の画像を見せる条件と、偏った画像を見せる条件を扱いました。多様な顔では人種や性別の偏見が減り、偏った顔では増える証拠が得られ、AI製であるという表示の有無によらなかったと報告しています。画像の出所を説明することと、画像の内容による影響を減らすことは別だと考えさせる結果です。
一方、Sim(2025)は、計1,881人が参加した3つの研究で、職業の指示に対する画像の男女比を操作しました。潜在的な偏り、つまり本人が意識して述べる意見とは別に測る自動的な結びつきでは、固定観念に沿う画像を見ても基準より偏りが増えませんでした。固定観念と逆の画像を見た参加者では、性別に中立な画像だけを見た参加者より偏りが小さくなりました。先の研究と同じく「画像を見た影響」を扱っていても、増加については結論が一致していません。
読み手は、偏りという語だけで結果をまとめず、顔の画像か職業の画像か、どんな条件を比べたか、何を測ったかを順に見ます。自分で好ましいと思う絵と、測定で偏りが小さくなる絵も同じとは限りません。資料を作る際には、見る人の心を画像で望ましい方向へ動かそうとするより、説明のために選んだ顔ぶれを自分で説明できる形に整えます。
使う画像の顔ぶれを一覧にし、実在の資料で補います
夏休みの発表資料に画像を入れるなら、最初に挿絵の役割を書き出します。人の特徴を説明する図なのか、仕事の場面を示す挿絵なのか、社会の構成を伝える資料なのかによって必要な根拠が変わります。社会の構成や実在する集団の姿を証拠として示す部分では、生成AIの画像を使わず、出典のある写真や統計を選びます。絵を作れたことを、実際の人々を調べたことの代わりにしないためです。
挿絵として候補を作った場合は、採用する画像だけを先に選ばず、候補を並べます。描かれた人について、性別や年齢がどう見えるか、肌の色がどのように描かれているかを観察し、人数を数えて一覧にします。これは画像の表現についての記録なので、実在する人の性別や出自を外見から決める作業とは区別します。判断が難しい姿は無理に分類せず、判断を保留した欄に残します。
一覧には、どの指示から作られた画像か、採用したかどうかも添えます。似た顔ぶれが続くなら、説明したい内容に必要な人物像の幅を考え直します。年齢の幅を見せたいのに近い年齢に見える人だけが並んでいる場合は、実在の写真を使った出典つきの資料で補います。写真は写っている人や場面についての説明と合わせて読み、どんな人々を紹介した資料なのかを確かめます。
補うときは、空いた場所に別の姿を置くだけで終わらせず、その写真が本文の説明にどう関わるかを書きます。生成した挿絵と実在の写真には、それぞれの種類が伝わる説明を添えます。画像を作ったり利用したりする際の条件は、利用するサービスの最新の説明で、保存や資料への掲載に関わる部分を読みます。この作業の成果は、人物像の選び方と、説明を支える実在の資料が見える原稿です。
保護者は、完成した資料の顔ぶれを一緒に見ます
保護者が見るところは、自由研究や発表の資料に描かれた人の顔ぶれです。文章のできを採点する前に、子どもと一緒に画像だけを順に眺めます。似た年齢に見える人が続く、肌の色の描き方が狭い範囲に集まるなど、目に映る特徴を具体的に言葉にします。AIを使ったことへの評価を先に置かず、でき上がった資料の人物像を話題にします。
一緒に見る際は、気に入った画像を否定する必要はありません。絵の色や構図を好むことと、その絵を並べた資料が幅広い人を含むことは、別々に話せます。子どもがどの姿の繰り返しに気づき、保護者には何が目立ったかを並べると、同じ画像でも見方に違いがあることを言葉にできます。分類の意見が合わないときも、どちらかの見え方を正解にせず、そう見えた箇所に戻って話します。
また、資料の中で目立つ人と背景にいる人を含めて眺めます。小さく描かれた人物を足していても、大きく扱われる姿だけが似ていれば、資料全体の印象としては同じ顔ぶれが残ります。性別や年齢を別々に眺めるだけでなく、似た組み合わせが繰り返されている点も話題にできます。これは人を外見で評価するためでなく、作者が選んだ画像の配置を読むための会話です。
夏休みの原稿に戻ると、挿絵の空欄を埋める作業には、誰を描くかという選択が含まれています。絵だけで伝わると思っていた内容も、顔ぶれを見直すと説明の言葉を添える場所が見えてきます。人々の実際の姿を示す部分には実在の資料を置き、生成画像の役割は、描写の偏りを点検したうえで説明を補う場面に限られます。
よくある質問
「人間の特徴」という言葉そのものを描かせた研究ですか
ここで引いた研究は、その日本語の語句を直接試したものではありません。Bianchi(2023)とNaik(2023)の性格や特徴を指示した研究が、扱う内容として最も近い位置にあります。題名への答えは、似た課題で人物の描かれ方に偏りが出たという根拠に基づいており、この語句から特定の姿が出る確率を示すものではありません。
指示に「多様な人を描いて」と足せば解決しますか
その指示だけで解決したと決めず、出てきた画像を点検します。先に見たBianchi(2023)の結果は、利用者の対策があっても固定観念が残る場合を示しています。試す場合は元の指示と変更後の指示を両方保存し、どの条件を変えたかを記録すると、単に好みの画像を選び直した場合と区別して説明できます。
男女が同じ割合の絵を採用すればよいですか
資料の目的によって、揃えるべき基準を決めます。実際の職業の構成を説明するなら、その国や集団の資料に沿った描写を選び、幅広い人の参加を示す挿絵なら、含めたい人々を先に考えます。数を揃えたことだけを公平さの根拠にせず、何を伝えるためにその基準を採ったかを、画像に添える説明に記します。
この記事の限界
対象は、特定の時期の画像生成モデルと、主に英語で職業や性格を指示した課題であり、日本語の指示を調べた研究は今回の根拠に含まれていません。外科医の割合は米国の構成との比較であり、現在使えるモデルが同じ描き方をするか、別の職業や日本の場面でどの程度偏るかまでを示す数値ではありません。
見る人への影響について、AlDahoulの実験は抄録に参加者の人数・国が記されておらず、Simの研究も参加者の国が記されていません。画像を見せた条件や測った偏りの違いを残して結果を読む必要があり、日本の中高生がAIの画像を見て持つ印象の変化は、引いた研究では扱われていません。
参考文献
- Bianchi F ほか. Easily Accessible Text-to-Image Generation Amplifies Demographic Stereotypes at Large Scale. Proceedings of FAccT 2023:1493-1504.
- Luccioni S ほか. Stable Bias: Evaluating Societal Representations in Diffusion Models. Adv Neural Inf Process Syst. 2023;36:56338-56351.
- Naik R ほか. Social Biases through the Text-to-Image Generation Lens. Proceedings of AIES 2023:786-808.
- Ali R ほか. Demographic Representation in 3 Leading Artificial Intelligence Text-to-Image Generators. JAMA Surg. 2024;159(1):87-95.
- AlDahoul N ほか. AI-generated faces influence gender stereotypes and racial homogenization. Sci Rep. 2025;15(1):14449.
- Seshadri P ほか. The Bias Amplification Paradox in Text-to-Image Generation. Proceedings of NAACL 2024 (Long Papers):6367-6384.
- Sim M ほか. Biased AI Outputs Can Impact Humans’ Implicit Bias: A Case Study of the Impact of Gender-Biased Text-to-Image Generators. Proceedings of AIES. 2025;8(3):2375-2386.
AIのもっともらしい間違いを、ひとつずつ一緒に疑う時間
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よくある質問
「人間の特徴」という言葉そのものを描かせた研究ですか
ここで引いた研究は、その日本語の語句を直接試したものではありません。Bianchi(2023)とNaik(2023)の性格や特徴を指示した研究が、扱う内容として最も近い位置にあります。題名への答えは、似た課題で人物の描かれ方に偏りが出たという根拠に基づいており、この語句から特定の姿が出る確率を示すものではありません。
指示に「多様な人を描いて」と足せば解決しますか
その指示だけで解決したと決めず、出てきた画像を点検します。先に見たBianchi(2023)の結果は、利用者の対策があっても固定観念が残る場合を示しています。試す場合は元の指示と変更後の指示を両方保存し、どの条件を変えたかを記録すると、単に好みの画像を選び直した場合と区別して説明できます。
男女が同じ割合の絵を採用すればよいですか
資料の目的によって、揃えるべき基準を決めます。実際の職業の構成を説明するなら、その国や集団の資料に沿った描写を選び、幅広い人の参加を示す挿絵なら、含めたい人々を先に考えます。数を揃えたことだけを公平さの根拠にせず、何を伝えるためにその基準を採ったかを、画像に添える説明に記します。