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数学が大嫌いな気持ちを生成AIに打ち明けると楽になるのか|不安を言葉にする研究

電車の揺れに合わせてスマートフォンを持ち直し、数学の教材を開く代わりに、入力欄へ気持ちを書きたくなることがあります。解き方を聞く元気はなくても、数学が大嫌いだという思いだけなら言葉にできそうな場面です。Park(2014)が書き出す対象にしたのは、これから受ける試験についての「考えや気持ち」でした。これは研究の課題説明を訳した言葉で、励ましの返事を受け取ることまで含んでいるわけではありません。

この記事の要点

数学が大嫌いな気持ちを生成AIに打ち明けると楽になるのか|不安を言葉にする研究

電車の揺れに合わせてスマートフォンを持ち直し、数学の教材を開く代わりに、入力欄へ気持ちを書きたくなることがあります。解き方を聞く元気はなくても、数学が大嫌いだという思いだけなら言葉にできそうな場面です。Park(2014)が書き出す対象にしたのは、これから受ける試験についての「考えや気持ち」でした。これは研究の課題説明を訳した言葉で、励ましの返事を受け取ることまで含んでいるわけではありません。

生成AIに打ち明ければ少し落ち着くのか、その変化が数学の点にも表れるのかは、使う前に知りたいところです。気持ちを言葉にする場所として使う余地はありますが、生成AIへの打ち明けを、不安を減らしたり得点を上げたりする確かな方法として勧める根拠は足りません。書き出す課題と、返事をするチャットボットでは、研究で行ったことも測った結果も違います。まずは、試験の成績、本人が感じる不安、心の健康全体という別々の結果を読み分け、そのうえで気持ちを扱う場所を選びます。

要点

数学が大嫌いな気持ちと、研究が測る不安

数学を嫌だと感じる理由には、問題を見ると緊張すること、失敗を思い出すこと、評価されるのがつらいことなどがあります。こうした言葉は、自分が何に困っているかを伝える入口になります。一方、研究の「数学への不安」は、単に数学が好きか嫌いかという好みと同じ意味ではありません。数学の課題に向き合うときの心配や緊張を扱い、成績との関係を調べています。

研究を読む際には、何が変われば効果があったとするのかを先に見ます。不安についての質問にどう答えたかを比べる研究もあれば、問題を解いた得点を比べる研究もあります。書いたあとに気持ちが軽くなったとしても、それだけで得点の変化を説明することはできません。逆に、得点に差が出た結果だけを見て、参加者がつらさから解放されたと読み替えるのも飛躍です。

ここで出てくる筆記開示は、自分の考えや感情を文章に書き出す課題を指します。文章の上手さを競う作文でも、数学の間違いを分析する答案づくりでもありません。書いた内容を読む相手の有無、書くタイミング、比べた活動によって、調べていることが変わります。電車で気持ちを入力する場面を考えるときも、研究で使われた「書く」という言葉だけを手掛かりに、同じ効果を期待しないようにします。

また、その場で返事があることと、書いた内容を残せることは別々の特徴です。ノートなら返事を待たずに終われますが、チャットでは返事を読んでさらに説明したくなる場合があります。どちらを使うかを考える入口は、今の自分が言葉を残したいのか、誰かに聞いてほしいのかを区別することです。後者なら、AIとの会話だけで用事を済ませると決めず、人に伝える選択肢も残します。

書き出すことで成績が変わった研究

Ramirez(2011)は、大事な試験の直前に心配を書き出す短い課題を調べました。実験室と実際の試験の場での実験を通じて、書き出す課題を受けた生徒の得点が有意に改善し、ふだんから試験で不安になりやすい生徒で特に効果があったと報告しています。有意とは、研究が採用した統計的な基準で、偶然のばらつきだけでは説明しにくい差と判断されたことです。これは、書くことと試験の成績を結び付けて調べた初期の重要な結果です。

Park(2014)は、数学への不安の強さがさまざまな学生80人を対象にしました。難しさをそろえた数学と言葉の問題に取り組む前に、静かに座る群と、試験についての考えや気持ちを書く群を比べています。静かに座る群では数学への不安が強い学生の成績が低かった一方、書く群では、その成績の差が有意に縮まりました。比較の相手が、励ましを受ける活動やAIとの対話ではなく、静かに座る活動だった点が読みどころです。

同じPark(2014)の研究では、不安の強い学生が書いた文章に、不安、原因、気づきに関する言葉が多いほど、数学の成績が良いという関連もありました。関連とは、ある特徴と別の特徴が一緒に現れる傾向です。その言葉を意図的に増やせば成績が上がるという実験結果ではありません。気持ちを書く際に、研究に出てきた種類の言葉を探して埋める課題にする必要はありません。

これらの結果で注目したいのは、書き手自身が試験への考えを文章にしたことです。生成AIに励ましの文章を作ってもらい、それを読む活動とは手順が異なります。とくにParkの研究で測った中心は数学の成績であり、本人が楽になったかどうかの測定ではありません。書くことの利点を考えるときも、気分についての結論まで一緒に受け取らない読み方が求められます。

効果が出ない結果まで含めて比べる

O’Meara(2026)は、試験への不安を対象に、単発の筆記開示を調べた21研究、合計1,457人の結果をメタ分析しました。メタ分析は、複数の研究の結果をまとめて計算する方法です。不安への効果はごくわずかで統計的に有意ではなく、成績への効果も極端な外れ値を除くと有意ではなくなりました。外れ値とは、ほかの結果から大きく離れた値を指し、それを含めるかで結論が変わるなら、成績への期待も慎重に扱います。

Myers(2021)は、大学の心理学の授業で行われる実際の試験を対象にしました。心配を書き出す課題、または不安の受け止め方についての説明を、対照となる課題と比べています。いずれも、試験への不安を減らす効果と試験成績を上げる効果は出ませんでした。書き出す方法を使ったという共通点があっても、初期の成功がほかの試験の条件で繰り返されるとは限らない結果です。

比べた相手と対象をそろえて読むため、主要な研究の設計を表にします。ここでは成績と不安を別の結果として扱います。結果の方向だけでなく、どの活動を比べた結果かも同じ行で読めます。

研究 対象 比べた活動 報告された結果
Park(2014) 数学への不安の強さがさまざまな学生80人 気持ちを書く群と静かに座る群 書く群では不安の強さによる成績の差が縮まりました。
Myers(2021) 大学の心理学の授業で行われる実際の試験 書き出しや説明と対照の課題 不安の軽減にも成績の改善にも効果が出ませんでした。
O’Meara(2026) 21研究、合計1,457人 各研究の単発の筆記開示と対照条件 不安への効果は有意ではなく、成績への効果も極端な外れ値を除くと有意ではありませんでした。

チャットボットの研究は何を示したのか

Fitzpatrick(2017)は、不安や抑うつの症状を自覚する18〜28歳の大学関係者70人を、対話型の仕組みを使う群と、情報の電子書籍を読む群に無作為に分けました。無作為化は、くじ引きのように割り当て、群のもともとの違いを小さくする方法です。期間は2週間で、対話にはWoebotという、あらかじめ決めた筋書きで話すチャットボットを使っています。これはChatGPTのように自由に文章を作る生成AIではありません。

対話の内容は、考え方や行動に着目する心理的な支援の方法である認知行動療法にもとづく自助の内容でした。先に見たFitzpatrickの試験では、チャットボット群で抑うつの症状が有意に減りましたが、不安は両群で減り、群の差ではありませんでした。参加者は自分がどちらを使うかを知っており、短い期間の試験でもあります。対話という形式の目新しさだけでなく、話される内容と比べた電子書籍を含めた結果として読む必要があります。

Li(2023)は、AIによる対話型エージェント、つまり会話のやり取りをする仕組みの研究を集めました。系統的レビューという、決めた方法で研究を探して評価するまとめと、メタ分析を行っています。抑うつの症状と心理的な苦痛は有意に減った一方、全体的な心の健康の改善は有意ではありませんでした。心の健康全体には、困りごとの少なさだけでなく、暮らしをどう感じているかという広い側面が含まれます。

この違いは、読者が何を求めて使うのかにも関係します。数学のことを短く書きたい、心配を人に説明する言葉を探したい、励ましを読みたいという目的は、それぞれ異なります。研究の見出しに「心の健康に効果」とあっても、その言葉だけでは、自分が求める変化が測られているかは決まりません。結果の項目を読み、不安についての結果なのか、別の症状についての結果なのかを見分けます。

返事を信じすぎず、使わない場面も決める

Abd-Alrazaq(2020)は、チャットボットの効果を検討した12研究をまとめています。効果が生活上意味のある大きさかという点や、研究ごとの偏り、結果の食い違いを理由に、効果を明確に結論づけるには根拠が十分でないとしました。安全性を評価した研究も限られていました。良い変化を報告した論文があることと、使うときの不都合まで十分に調べられていることは区別して読むべき点です。

生成AIに気持ちを書く場合、返事は自分についての判定として受け取らないようにします。入力していない事情まで原因として挙げたり、短い文章から能力や性格を決めつけたりした返事は、採用を保留します。これは数学の能力だけでなく、自分が何に苦しんでいるかについても同じです。書いた本人の言葉とAIが付け足した説明を分ければ、もっともらしい説明が自分の記憶や判断に入り込むのを避ける扱い方になります。

たとえば、返事の中で自分が書いていない出来事が原因になっていたら、その部分を気持ちの記録へ写しません。つらさを否定されたり、自分を責める方向に会話が進んだりしたときは、納得できる返事が出るまで続けず、そこで閉じます。AIが出した説明を訂正する作業で負担が増えるなら、そのやり取りを続ける目的はありません。人への相談を止めるような返事にも従わず、相談する相手との連絡を保ちます。

不安が長く続く、眠れない、学校に行くことが難しいといった困りごとは、AIの返事で片付けず、保護者や学校、医療機関など人の支援につなぎます。ここで必要なのは、AIから病名や重さの判定を得ることではなく、生活で困っていることを伝えることです。数学の気持ちを話し始めたのだから数学だけに絞る、という制限も要りません。勉強以外に及んでいる困りごとも、そのまま相手に伝えます。

電車で言葉にするなら、送る前後に見るところ

以下は、効果が実証された新しい課題の紹介ではなく、入力した言葉を自分で扱うための手順です。まず、困った出来事と、そのときの気持ちを混ぜずに書きます。解けない問題があったという出来事から、自分全体への評価へ話が広がっていないかを読み直します。まだ言葉にしたくないことは空けておき、文章を完成させるために詳しい事情を追加する必要はありません。

ノートに書くか、端末に下書きを残すか、AIに送るかは、そのあとに選べます。電車で周囲の視線が気になるなら、個人名や学校名を入力せず、送信も急ぎません。サービスを使う場合は、入力内容の保存や利用、対象年齢について、そのサービスの現在の説明を読みます。画面上で親しげな返事が出ることと、入力した内容の扱いは別に確認する項目です。

AIに頼むなら、指示の例は「書いた気持ちを、原因を決めつけず短く整理してください。」程度にとどめます。返事を読んだら、自分の言葉が残っている箇所と、AIが推測した箇所を見分けます。自分の気持ちと違う文は消し、他人に見せるためにもっともらしい文章へ整えすぎないようにします。うまく表せない部分が残っていても、そのまま人に説明するためのメモとして使えます。

保護者が見るところは、会話の長さや文章の出来より、本人が何を求めているかです。聞いてほしいだけなのか、困っていることを誰かに伝える手助けがほしいのかを、話せる範囲で確かめます。次の項目は本人を採点するためではなく、声を掛ける際に見落としを減らすために使います。記録の全文を見せることを相談の条件にせず、本人が伝えたい箇所から受け取ります。

よくある質問

話して少し落ち着いたら、点も上がると考えてよいですか

落ち着いたという感覚だけから、得点の上昇を予想するのは避けます。気分と成績は別の結果で、問題の難しさや学習した内容も得点に関わります。自分の記録を残すなら、書いたあとの気持ちと、あとで返ってきた答案の結果は別々に記し、AIの返事を得点の理由にしない扱い方ができます。

紙に書くよりAIに話すほうがよいですか

ここで引いた研究には、紙と生成AIを直接比べて優劣を決めた結果がありません。返事が要らず、自分の言葉だけを残したいなら、紙や端末の下書きを選べます。AIに送るときは、返ってきた文章をそのまま自分の気持ちとして保存せず、本人が書いた内容に沿っている箇所を選んで残します。

子どもがAIにしか話したがらない場合、何から関わればよいですか

まずは、会話の全文を求めず、今どうしてほしいかを話せる範囲で聞くところから関われます。AIへの打ち明けをやめさせる議論だけにせず、人にも伝えられる困りごとがあるかを受け取ります。本人の言葉を残したメモがあれば、共有してよい箇所を本人が選び、保護者や相談相手に渡せます。

この記事の限界

適用範囲は、試験に向けた筆記開示や、大学関係者などを対象にした心の健康のための対話に限られ、数学への不安を日本語で生成AIに打ち明ける日本の中高生を直接調べた研究は、今回集めた範囲にありませんでした。研究の国や学年が抄録に示されていないものもあり、紙への筆記と生成AIとの会話で気分を比べた結果も含まれていません。

短期間の試験や筋書きに沿うチャットボットの結果では、現在の生成AIとの会話を長く続けた場合の変化や安全性まで見通せません。ここで引いた結果は、一人ひとりの不安の重さに当てはめる根拠にはなりません。

参考文献

  1. Ramirez G ほか. Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science. 2011;331(6014):211-213.
  2. Park D ほか. The role of expressive writing in math anxiety. J Exp Psychol Appl. 2014;20(2):103-111.
  3. O’Meara P ほか. Single-session expressive writing interventions for test anxiety: a meta-analysis. Anxiety Stress Coping. 2026;39(1):21-34.
  4. Myers SJ ほか. Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom? Cogn Res Princ Implic. 2021;6(1):44.
  5. Fitzpatrick KK ほか. Delivering Cognitive Behavior Therapy to Young Adults With Symptoms of Depression and Anxiety Using a Fully Automated Conversational Agent (Woebot): A Randomized Controlled Trial. JMIR Ment Health. 2017;4(2):e19.
  6. Li H ほか. Systematic review and meta-analysis of AI-based conversational agents for promoting mental health and well-being. NPJ Digit Med. 2023;6(1):236.
  7. Abd-Alrazaq AA ほか. Effectiveness and Safety of Using Chatbots to Improve Mental Health: Systematic Review and Meta-Analysis. J Med Internet Res. 2020;22(7):e16021.

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よくある質問

話して少し落ち着いたら、点も上がると考えてよいですか

落ち着いたという感覚だけから、得点の上昇を予想するのは避けます。気分と成績は別の結果で、問題の難しさや学習した内容も得点に関わります。自分の記録を残すなら、書いたあとの気持ちと、あとで返ってきた答案の結果は別々に記し、AIの返事を得点の理由にしない扱い方ができます。

紙に書くよりAIに話すほうがよいですか

ここで引いた研究には、紙と生成AIを直接比べて優劣を決めた結果がありません。返事が要らず、自分の言葉だけを残したいなら、紙や端末の下書きを選べます。AIに送るときは、返ってきた文章をそのまま自分の気持ちとして保存せず、本人が書いた内容に沿っている箇所を選んで残します。

子どもがAIにしか話したがらない場合、何から関わればよいですか

まずは、会話の全文を求めず、今どうしてほしいかを話せる範囲で聞くところから関われます。AIへの打ち明けをやめさせる議論だけにせず、人にも伝えられる困りごとがあるかを受け取ります。本人の言葉を残したメモがあれば、共有してよい箇所を本人が選び、保護者や相談相手に渡せます。