「彼は学生だ」を英語の過去形にするとき生成AIの翻訳に頼ってよいか|機械翻訳と英作文の研究
放課後、英作文のノートを開き、短い日本語を英語にする手が止まると、画面に訳してもらいたくなります。87件の外国語教育の機械翻訳研究をまとめたLee(2023)は、多くの研究が、とくに作文への良い影響を報告していたと整理しています。「彼は学生だ」のような短文でも、翻訳を見れば書けることと、自分で書けるようになることは同じなのでしょうか。翻訳は自分の英文と比べる材料として使えますが、学習の成果は、訳を閉じて書いた英文で見届ける必要があります。
- 機械翻訳を自分の訳と比べる使い方では、語彙や文法の誤りが減った研究があります。
- 翻訳を使った作文の正確さと、文の複雑さや語彙の広がりは、別々に評価する項目です。
- 英語の知識が少ない学習者ほど、訳の良し悪しを選ぶ段階で支えが必要です。
- 中学生の研究では、翻訳なしの後日の成績は翻訳使用中より低く、学習前より高い結果でした。
- 自分の訳を残し、違いを文法書で調べ、訳を閉じて書くところまでを練習に含めます。
「彼は学生だ」を英語の過去形にするとき生成AIの翻訳に頼ってよいか|機械翻訳と英作文の研究
放課後、英作文のノートを開き、短い日本語を英語にする手が止まると、画面に訳してもらいたくなります。87件の外国語教育の機械翻訳研究をまとめたLee(2023)は、多くの研究が、とくに作文への良い影響を報告していたと整理しています。「彼は学生だ」のような短文でも、翻訳を見れば書けることと、自分で書けるようになることは同じなのでしょうか。翻訳は自分の英文と比べる材料として使えますが、学習の成果は、訳を閉じて書いた英文で見届ける必要があります。
たとえば、過去の状態を表す基本の英文は「He was a student.」です。この文では、主語に合うbe動詞の過去形を使っています。訳がすぐ手に入っても、どの語をなぜ選ぶかを自分で考えたか、後で同じ判断を再現できるかは、ノートに残った正解だけでは見えません。機械翻訳は文章を別の言語に自動で訳す道具で、ここで読む研究の中心は従来の翻訳サービスを使った英作文です。生成AIに訳を頼むときにも、完成した文章を見る段階と、自分の力を調べる段階を分けると、何を任せるかを考えやすくなります。
要点
- 機械翻訳を自分の訳と比べる使い方では、語彙や文法の誤りが減った研究があります。
- 翻訳を使った作文の正確さと、文の複雑さや語彙の広がりは、別々に評価する項目です。
- 英語の知識が少ない学習者ほど、訳の良し悪しを選ぶ段階で支えが必要です。
- 中学生の研究では、翻訳なしの後日の成績は翻訳使用中より低く、学習前より高い結果でした。
- 自分の訳を残し、違いを文法書で調べ、訳を閉じて書くところまでを練習に含めます。
「彼は学生だ を過去形にすると」という疑問を、完成と習得に分けます
英作文で翻訳を使う目的には、伝えたい内容を英語の文章に仕上げることと、自力で英語を組み立てる練習をすることがあります。前者なら、適切な訳語を得て、伝わる文章を完成させることが直接の成果です。後者なら、完成した文に加えて、次に似た内容を書くときに自分で語を選べるかを見る必要があります。放課後の短い練習でも、どちらを目指してノートを開いたかによって、翻訳を見る時点が変わります。
Lee(2023)の研究は、2000〜2019年に発表された機械翻訳と外国語教育の研究を集めています。一定の基準で文献を集めて見渡す系統的レビューと、複数の結果をまとめて計算するメタ分析を用いた整理で、作文を中心に良い影響の報告が多くありました。これは、翻訳を学習から一律に遠ざける見方を考え直す材料になります。同時に、作文の出来、学習者の受け止め方、道具なしの成績のうち何を測った研究かを読むことで、自分の目的に合う成果を選べます。
「正しい英文を手に入れた」を「過去形を覚えた」と記録すると、練習の終了を早く判断してしまいます。逆に、翻訳を見たという理由だけで、その後に行った比較や書き直しまで無駄と扱うと、学んだ内容を見落とします。ノートには最初の自分の英文を残し、訳を見て直した部分を区別すると、翻訳が担った仕事が見えるようになります。最後に画面を閉じて書く欄も用意すれば、完成と習得をそれぞれ点検できます。
自分で訳してから比べる使い方には、どんな根拠がありますか
Lee(2020)が扱ったのは、英語を外国語として学ぶ学生が、母語で書いた文章を、まず翻訳の助けなしで英語にする方法です。その後に機械翻訳の英文を見て、自分の英文を直しました。分析では語彙と文法の誤りが減り、書き直しの質が上がったほか、作文を仕上げまでの過程として捉える変化も報告されました。研究者は、学びにつなげるために、教える側が道具の限界を知り、使い方を支える必要があると述べています。
この順序では、自分が選んだ語と、翻訳が選んだ語が並びます。自分の文を消さずに置くことで、時を表す部分を変えたのか、単語の選び方を変えたのかを指で追えます。最初から完成した訳だけを写す場合には残らない、自分の判断との食い違いが材料になります。練習でこの方法を採り入れるなら、書き直した文のきれいさに加え、どこに迷っていたかも残すと、後から調べる箇所を絞れます。
Tsai(2019)は、中国語話者の英語専攻の大学生が、中国語で書き、自分で英語にした文と、2016年版のGoogle翻訳で英語にした文を比較しました。翻訳が出した英文は、学生自身の英文よりつづりや文法の誤りが少なく、語数や上級の語の使用も多い結果でした。学生は語彙を探すことや作文を完成させることに満足していました。この研究が比べているのは文章の質なので、翻訳の英文を読んだ後に何を自力で書いたかは、別に記録したい項目です。
正確さが上がっても、英作文のすべてが伸びるわけではありません
Chung(2022)は、韓国の英語学習者91人が、何も使わずに英作文をした後、1週間後に別の題でGoogle翻訳だけを使って書く条件を調べました。翻訳を使った作文では正確さが上がった一方、構文の複雑さや語彙の複雑さへの効果ははっきりしませんでした。構文の複雑さは文の組み立ての複雑さ、語彙の複雑さは使う語の高度さなどを捉える観点です。英語力の段階や、物語文か論説文かという文章の種類でも、利点と欠点が異なりました。
文法上の誤りが減ることは、英文を相手に伝えるうえで役立ちます。しかし、正確な短文をそろえたことと、理由や条件を組み合わせて表現の幅を広げたことは、採点上も学習上も別の変化です。自分の練習では、過去の状態を正しく表すことが目標なら、その部分に注目して訳と比べます。訳に難しい語や長い構文が増えた場合も、それらをすべて使うことを練習の到達点にする必要はありません。
研究を見比べるときは、比べた英文が誰のものか、道具を使っている最中か、後で書いたものかを読み分けます。下の表は、比較の方法が異なる研究を並べたものです。結果の欄は、それぞれの研究が扱った成果に対応させています。
| 研究 | 対象 | 比べたもの | 研究が示した結果 |
|---|---|---|---|
| Tsai(2019) | 中国語話者の英語専攻の大学生 | 自分で書いた英訳と機械翻訳の英訳 | 語彙探しや作文の完成に、学生が満足していました。 |
| Chung(2022) | 韓国の英語学習者91人 | 道具なしの作文と、後日の別の題での翻訳使用の作文 | 正確さを改善する助けになりました。 |
| Lee(2024) | 韓国の中学生 | 事前、翻訳使用中、翻訳なしの事後と後日の作文 | 使用中より事後と後日は低下しましたが、後日は事前を上回りました。 |
翻訳を外した後の低下を、どう読めばよいですか
Lee(2024)は、韓国の中学生の作文を、事前、機械翻訳を使った版、事後、さらに2週間または4週間後の保持テストで調べました。保持テストは、時間がたってからどれだけ学習の成果が残っているかを見るテストです。翻訳を使った版では、書く流暢さ、正確さ、複雑さが上がりましたが、翻訳なしで書く事後と保持テストでは下がりました。低下は語彙の項目より文法の項目で起こりやすく、道具が使えるときの出来の良さが、そのまま残ったわけではありません。
ただし、Lee(2024)では、保持テストで測った項目はすべて事前テストを上回り、著者は機械翻訳に良い効果があったと結論しています。「翻訳を外したら下がった」という部分だけを読むと、学習前より悪くなったように聞こえます。実際には、使用中と比べた低下と、事前と比べた向上が同時に見られています。どの時点を基準にしているかを書き添えることで、翻訳の助けと残った学びを区別できます。
この結果を放課後の練習に照らすなら、訳を見ながら直した欄だけで理解を判定しないことが具体的な対応になります。画面を閉じた直後に書くことと、後の練習で同じ文法を使うことも分けて記録します。前は書けなかった部分が書けるようになったのか、訳がある間だけ正しくなったのかを、元のノートに戻って見られます。翻訳の使用中にできたことを消す必要はなく、それぞれの条件を並べて読む記録にします。
英語が苦手なときほど、訳の採用に支えが要ります
Lee(2022)は、英語を外国語として学ぶ学生の書き直しを、もともとの作文力の段階別に調べました。どの段階でも直しは良くなりましたが、英語の知識が最も少ない学生が得た利益は最も小さくなりました。力の高い学生は、自分の訳と機械翻訳の訳から良い表現を吟味して選び、より多くの利益を得ていました。知識が少ないほど道具がすべて補うというより、出てきた訳を判断するところに差が表れた研究です。
翻訳を見て知らない語ばかりだった場合、全文を写す前に、今習っている部分を指せるかを見ます。過去の話を表す練習なら、まずその意味を担う語と、自分の文との違いに印を付けます。訳に誤りや意味のずれがある場合も、理由を調べずに採用すれば、その形を正しいと思って覚えるおそれがあります。文章が自然に読めるという印象だけで採用せず、元の日本語の意味と、文法書の対応する例を照らす手順が必要になります。
自分がどこまで書けるかを測りたい練習では、最初の答案を作る間は翻訳を使わないほうが目的に合います。また、訳の語を読めず、何を直したかも説明できない状態なら、訳を増やしても比較する材料を扱いきれません。その場合は文を短くし、教科書や文法書の既知の表現を使って、自分で意味を組み立て直します。保護者が手伝うときも完成した訳を先に渡すより、本人が迷った語を指し、調べる見出しを一緒に探す形にすると、止まった場所が見えます。
放課後のノートに、自分で選んだ理由を残します
まず、訳したい日本語と自分の英文を書き、迷った部分に印を付けます。途中で止まっても、書けた語を残してから翻訳を見れば、何を補ってもらったかが読み取れます。生成AIに頼むなら、「過去の状態を表す英文に訳し、時を表す部分を示してください」のように、今回の目的を短く添えます。この依頼は見る箇所を絞るためのもので、返ってきた英文は辞書や文法書と照らして扱います。
次に、自分の英文と訳文を並べ、違う箇所ごとに元の意味が保たれているかを読みます。調べる際には、訳文全体に丸を付けるだけでなく、語形、語順、抜けた語など、変更の種類を書き分けます。文法書に似た例があれば、その例のどの部分と対応するかを記し、訳を採用した理由を自分の短い言葉で添えます。説明を読んでも対応が見えない箇所は、疑問として残して人に尋ねれば、英文全体を見せるより相談する焦点が定まります。
最後に、翻訳と書き直した文を隠して、元の日本語から英語を書きます。書けなかったときは完成文をまとめて写し直す前に、思い出せなかった部分を元の印と比べます。後の練習では、問題集にある同じ文法の別の短文でも試すと、元の文を覚えたことと、語を選ぶ判断を使えたことを見分ける材料になります。ここまでを実施したかは、次の項目で本人と保護者が一緒に点検できます。
- 翻訳を見る前の英文と、迷った箇所の記録
- 自分の英文と訳文で違っていた箇所の印
- 調べた文法書の見出しと、訳を採用した理由
- 翻訳を閉じて書いた英文と、後で書いた英文
保護者が見るのは、難しい英語に置き換わった量より、どこを自分で判断できたかです。説明を求めるときは英文全体を解説させるより、印のある箇所を本人に選んでもらうと、負担を絞れます。理由が言えた箇所と、辞書や人の助けがまだ要る箇所を分けて残せば、次の放課後に取り組む内容が具体的になります。
よくある質問
短い文なら、最初から翻訳を見てもよいですか
文章を完成させるのが目的なら訳を候補にできますが、自力で書く練習なら先に自分の英文を残すほうが比較しやすくなります。短い文でも、時を表す語を自分で選んだのか、表示された語を写したのかは異なります。Lee(2020)で誤りの減少が報告されたのは、自分で訳してから機械翻訳と比べて直す使い方でした。放課後のノートでも、最初の訳を消さず、その横に修正と理由を書き込みます。
訳を閉じると間違えるのは、翻訳を使ったせいですか
訳を閉じたときの誤りだけでは、原因を翻訳の使用に決められません。Lee(2024)では、翻訳を使った版より後日の出来は下がった一方、学習前より高い結果でした。自分の記録でも、翻訳使用中との比較だけでなく、最初に自力で書いた英文との比較が要ります。使用前に迷った語を後で選べるようになったか、まだ同じ箇所に助けが要るかを、残したノートで見ます。
保護者が英語を説明できなくても手伝えますか
英文の正誤をすべて判定する役を引き受けなくても、本人の比較を手伝えます。本人が迷った箇所を指し、文法書のどの見出しを調べたかを聞けば、答えを選んだ過程に目を向けられます。翻訳を見る前と閉じた後の英文を残すことも、一緒に点検できます。語形の理由が解決しなかったときは、元の日本語、自分の訳、翻訳の候補をそろえ、疑問の箇所に印を付けて質問する準備を支えます。
この記事の限界
測定の中心は、従来の機械翻訳を使った作文や書き直しの出来で、韓国の学習者と中国語話者の大学生などを扱っており、使用中の成績と後日に残る力は区別が必要です。日本語を母語とする中高生、基本的な過去形の習得、ChatGPTなどの生成AIと従来の翻訳の学習効果の比較を調べた研究は、今回取り上げた文献の検索では見つからなかったため、現在の生成AIに同じ成果を見込めるかは未検証です。
Lee(2024)の追跡は2週間または4週間後までで、数か月にわたり翻訳なしの英作文を追う比較が次の課題です。今後読む研究では、翻訳を使わない学習者との比較と、時間を置いた自力の答案がそろうことが、持続する学びを見極める材料になります。
参考文献
- Lee SM. The effectiveness of machine translation in foreign language education: a systematic review and meta-analysis. Comput Assist Lang Learn. 2023;36(1-2):103-125.
- Lee SM. The impact of using machine translation on EFL students’ writing. Comput Assist Lang Learn. 2020;33(3):157-175.
- Tsai SC. Using google translate in EFL drafts: a preliminary investigation. Comput Assist Lang Learn. 2019;32(5-6):510-526.
- Chung ES ほか. The effect of using machine translation on linguistic features in L2 writing across proficiency levels and text genres. Comput Assist Lang Learn. 2022;35(9):2239-2264.
- Lee SM. Different effects of machine translation on L2 revisions across students’ L2 writing proficiency levels. Lang Learn Technol. 2022;26(1):1-21.
- Lee SM ほか. Effects of machine translation on L2 writing proficiency: The complexity accuracy, lexical diversity, and fluency. Lang Learn Technol. 2024;28(1):1-19.
AIのもっともらしい間違いを、ひとつずつ一緒に疑う時間
- 向く人: 生成AIの説明と教科書が食い違ったとき、どちらが正しいかを根拠から確かめたい生徒
- 向く人: 子どもが生成AIで調べた答えをそのまま信じていないか、気になっている保護者
- 向かない人: 宿題や小論文を生成AIに書かせて、早く提出できればよいと考えている人
- 向かない人: 答えの根拠には興味がなく、正解だけを短く知りたい人
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よくある質問
短い文なら、最初から翻訳を見てもよいですか
文章を完成させるのが目的なら訳を候補にできますが、自力で書く練習なら先に自分の英文を残すほうが比較しやすくなります。短い文でも、時を表す語を自分で選んだのか、表示された語を写したのかは異なります。Lee(2020)で誤りの減少が報告されたのは、自分で訳してから機械翻訳と比べて直す使い方でした。放課後のノートでも、最初の訳を消さず、その横に修正と理由を書き込みます。
訳を閉じると間違えるのは、翻訳を使ったせいですか
訳を閉じたときの誤りだけでは、原因を翻訳の使用に決められません。Lee(2024)では、翻訳を使った版より後日の出来は下がった一方、学習前より高い結果でした。自分の記録でも、翻訳使用中との比較だけでなく、最初に自力で書いた英文との比較が要ります。使用前に迷った語を後で選べるようになったか、まだ同じ箇所に助けが要るかを、残したノートで見ます。
保護者が英語を説明できなくても手伝えますか
英文の正誤をすべて判定する役を引き受けなくても、本人の比較を手伝えます。本人が迷った箇所を指し、文法書のどの見出しを調べたかを聞けば、答えを選んだ過程に目を向けられます。翻訳を見る前と閉じた後の英文を残すことも、一緒に点検できます。語形の理由が解決しなかったときは、元の日本語、自分の訳、翻訳の候補をそろえ、疑問の箇所に印を付けて質問する準備を支えます。