生成AIの読み上げ音声で英検4級の聞き取りを練習してよいか|合成音声と聞き取りの研究
通学路の歩道で、かばんに入れた端末から流れる英文が、車の通る音に重なって聞こえます。英検4級の勉強法として何度も流している短い文なのに、最後の語だけ拾えず、もう一度再生したくなることがあります。生成AIに読ませた声で練習を続けて、人の録音を聞く力も育つのかという疑問は、音声を手軽に用意できるほど身近になります。英検の公式音声を練習の中心に置き、合成音声を、意味と読み方を確かめた単語や短い文の反復に使うのが妥当です。
- 合成音声の自然さへの評価と、聞いて内容を理解した成績は分けて見ます。
- 外国語の理解、母語での物語の記憶、発音の練習は、測っている力が違います。
- 聞き逃しが続くときは、声だけでなく、原稿の難しさと周囲の雑音も点検します。
- 合成音声で復習した後は、人の録音を原稿なしで聞く機会を残します。
生成AIの読み上げ音声で英検4級の聞き取りを練習してよいか|合成音声と聞き取りの研究
通学路の歩道で、かばんに入れた端末から流れる英文が、車の通る音に重なって聞こえます。英検4級の勉強法として何度も流している短い文なのに、最後の語だけ拾えず、もう一度再生したくなることがあります。生成AIに読ませた声で練習を続けて、人の録音を聞く力も育つのかという疑問は、音声を手軽に用意できるほど身近になります。英検の公式音声を練習の中心に置き、合成音声を、意味と読み方を確かめた単語や短い文の反復に使うのが妥当です。
文字を機械で音声にする仕組みを、音声合成、またはTTSと呼びます。英文そのものを生成AIに作らせる作業と、用意した英文を音にする作業は別で、それぞれ点検するところも違います。音声の研究を読むときも、その場で内容がわかったか、聞き心地がよかったか、練習後に力が伸びたかを分ける必要があります。通学の時間に流す教材を選ぶなら、声の人間らしさだけでなく、何を聞き直したいのかと、聞いた後に何を答えられるようにしたいのかまで決めておくと、音源の役割がはっきりします。
要点
- 合成音声の自然さへの評価と、聞いて内容を理解した成績は分けて見ます。
- 外国語の理解、母語での物語の記憶、発音の練習は、測っている力が違います。
- 聞き逃しが続くときは、声だけでなく、原稿の難しさと周囲の雑音も点検します。
- 合成音声で復習した後は、人の録音を原稿なしで聞く機会を残します。
英検4級の勉強法として、読み上げに何を任せるか
読み上げの使い道として考えやすいのは、聞き逃した表現だけを取り出して復習することです。長い教材を先頭から繰り返す代わりに、意味を確認した短い文を用意し、その音のつながりに注意を向けます。この場合、生成AIに新しい練習問題を大量に作らせることは目的に含めなくてかまいません。聞きたい文がすでにあるなら、文字から音への変換に役割を絞れます。
音声を選ぶ際には、「好みの声」と「練習したい聞き取り」を分けて考えます。滑らかな声でも、内容を追わずに流していれば、どこを理解したかを振り返れません。逆に少し機械らしく感じる声でも、文の内容を正しく受け取れるなら、短い復習の材料にはなります。声の印象を尋ねる評価と、聞いた内容への正答を比べる評価が別々に行われるのは、この違いがあるためです。
学習の目的も先に絞ります。単語の形と音を結び付けたいときは、その語が入る短い文を選び、会話の流れを追いたいときは、話者のやり取りを含む人の録音を使います。英検の過去問の音声なら、実際の問題と対応させて、どの発言が答えの手掛かりだったかをたどれます。合成音声で扱う復習文と、力を試す音声を分けておくと、覚えた文を再生できたことを、そのまま新しい文への対応力と取り違えずに済みます。
自然さが低くても、理解が同程度だった研究
Bione(2020)は、ブラジルの英語学習者29人に、合成音声と人の声で物語や文を聞かせました。わかりやすさの評価に加えて、内容理解、聞いた語を書き取る課題、過去形の語尾である-edの聞き分けなどを調べています。両方の声で、わかりやすさの評価とこれらの課題の成績はほぼ同じでした。一方、自然さの評価では合成音声が低く、聞き心地の差がそのまま課題の成績の差になるわけではありませんでした。
この実験で測ったのは、聞かせた材料への反応です。練習を重ねた後で、初めて聞く英文への成績が伸びるかを追った設計とは区別します。音声を教材の候補として扱う根拠と、学習法として得点を上げる根拠では、必要な比較が変わります。前者では同じ内容を受け取れるかが中心ですが、後者では練習前後の変化や、別の音声への対応も見ることになります。
Craig(2019)は、説明のアニメーションに付ける語りを、古い合成音声、新しい合成音声、人の録音に分けて学習を比べました。新しい合成音声の群は、人の録音の群と、学習の成果や受け止め方などの多くで統計的な差がありませんでした。こちらは母語で説明を学ぶ場面で、英語を外国語として聞く課題ではありません。研究を並べる際には、声の比較だけでなく、聞いて何をする課題だったかも対応させます。
| 研究 | 対象・材料 | 比べた音声 | 研究で得られた結果 |
|---|---|---|---|
| Bione(2020) | ブラジルの英語学習者29人 | 合成音声と人の声 | 理解・書き取り・聞き分けの成績はほぼ同じでしたが、自然さは合成音声が低く評価されました。 |
| Craig(2019) | 説明のアニメーション | 古い合成音声・新しい合成音声・人の録音 | 新しい合成音声と人の録音では、学習の成果などの多くに統計的な差がありませんでした。 |
長い物語と雑音では、人の声との差もあります
Rodero(2023)は、長い物語の朗読で合成音声と人の声を比べました。人の声では、物語を楽しみ、情景を思い浮かべ、話に入り込む反応が強く、内容もよく覚えていました。対象は母語で物語を聞く場面であり、先に見たBione(2020)の結果とは、聞き手も課題も違います。短い文の語を拾う練習と、物語の流れを追って記憶する活動では、音声に求める働きも異なります。
Simantiraki(2023)は、母語の聞き手26人と、外国語の聞き手31人に、雑音の中で複数の種類の声を聞かせました。普通の声、雑音下で自然に強調された声、人工的に強調した声、文字から合成した声を比べ、合成音声は両方の聞き手の集団で最も聞き取りにくく、主観的な負担も大きいという結果でした。外国語の聞き手には、声に対して雑音が相対的に弱い条件が用意されています。また、本人が感じる負担と瞳孔の反応から見た処理の負担では、最も負担の少ない声が一致しませんでした。
通学路で聞き取りにくくなったら、すぐに英文を難しすぎると判断せず、同じ音源を静かな状態で聞いたときと比べます。静かなら拾える語が、周囲の音と重なると消えるのであれば、まず変える対象は再生する環境です。雑音に合わせて文の途中を何度も追いかけるより、聞く練習をいったん切り上げ、落ち着いて再開するほうが原因を見分けやすくなります。通学路では、周囲への注意が必要な区間を、聞き取りを頑張る場所にしないようにします。
発音の練習と、原稿の整え方にも手掛かりがあります
Liakin(2017)は、フランス語を第二言語として学ぶ学生を対象に、スマートフォンの合成音声による練習、教師と行う練習、発音の指導を伴わない会話練習を比べました。扱ったのは、語末の子音を次の語につなげて発音するリエゾンです。群ごとに時間に沿った変化を見ると、合成音声の群と教師の群で伸びが見られました。ここでの成果は自分で発音する力であり、英語の音声を聞いて問題に答える成績とは測定の向きが違います。
Arvidsson(2025)は、ケベックのフランス語の話し言葉を書き起こし、合成音声で読ませたものを7人に評価してもらいました。言いよどみや繰り返し、言い直しを取り除いた原稿では、音声は比較的理解しやすいと受け止められました。この予備研究は、声の仕組みだけでなく、読み上げる文字の状態にも目を向けています。評価したのは聞き手の感じる理解のしやすさで、練習による能力の伸びではありません。
復習用の原稿でも、本文に混ざった解説や日本語訳まで続けて読ませると、聞きたい箇所を探す作業が増えます。英文、意味の確認に使うメモ、再生するときの目印は分けて持っておくと、音声と文字を照らしやすくなります。ただし、会話の間や言い直し自体を聞く目的なら、それらを消すことは練習内容の変更になります。聞きやすさを上げたいのか、会話にある揺れを聞きたいのかによって、残す材料を選びます。
合成音声を使わない場面と、誤りを残さない点検
Brunow(2021)は、学習障害のある16歳と17歳の4人に、小説の抜粋を合成音声と人の朗読で聞かせ、理解の課題で比べました。個人の結果は一様ではありませんでしたが、人の朗読のほうが平均点は高くなりました。著者は合成音声を指導の補助として位置付けており、この小規模な研究を個人の診断や支援方法の判断に当てはめることはできません。
自分の練習でも、音声を取り替えるほど負担が増すなら、無理に読み上げを加える必要はありません。たとえば、意味のわからない文が続く、聞くたびに原稿と声が合わないと感じる、解答の理由をたどれない、といった状態では、まず音声と解説が対応した既存の教材に戻ります。新しい声の選択や原稿の修正に手間がかかり、聞く活動が後回しになっているときも同様です。合成音声の作成自体を終えることが目的になっていないかを見ると、使わない判断をしやすくなります。
生成AIに英文も作らせる場合は、原稿と音声を別々に点検します。原稿では、語の意味や文法が学習済みの内容と合うかを辞書や教材で照らし、音声では、文字に対応する語が聞こえるか、途中で不自然に切れていないかを見ます。誤った文や読みをそのまま反復することを避けるため、疑問が残る箇所は練習用の音源から外します。流暢に読まれたという印象だけで、原稿まで正しいと扱わないようにします。
同じ文を読み上げるだけの依頼なら、「この英文を変えずに読み上げてください」のように、求める作業を短く伝えます。返ってきた音声を原稿と照らすところまでを作成の作業に含めます。読み上げの対応範囲や調整方法は、使うサービスの最新の説明を参照し、実際に出た音で判断します。声の設定を変えた際は、以前の音源と区別して保存しておくと、違和感が出たときに原稿と設定のどちらを変えたかをたどれます。
聞き取りの記録を、次に選ぶ音源につなげる
通学用に選ぶ前に、静かな状態で公式音声を原稿なしで聞き、内容を短く言い直します。その後に原稿を開き、聞こえなかった語だけでなく、聞こえたのに意味がつながらなかった箇所にも印を付けます。前者なら音と文字の対応、後者なら語彙や文の組み立てを見直す対象にします。単に「聞けなかった」と記すよりも、復習に戻す範囲が具体的になります。
短い文を合成音声で復習するときは、先に原稿の意味と読みを確認し、次に文字を隠して聞きます。答え合わせでは、拾えた単語の多さだけでなく、誰が何をしたか、どんな応答だったかを原稿と照らします。語を聞き間違えた箇所には実際に聞こえた形を、意味を取り違えた箇所にはそのときの解釈を残します。こうして記録を分けると、音源を替える前に文を読み直すべきかどうかを判断できます。
復習を終えたら、人の録音に戻り、元の文と別の文をそれぞれ聞きます。元の文で確かめるのは、見直した箇所が音として拾えるようになったかです。別の文で見るのは、原稿の記憶に頼らず、音から内容を受け取れるかです。聞けた感触だけで終えず、実際に答えた内容を残すと、次に復習する材料を選ぶ手掛かりになります。
保護者が見る際は、再生した時間や回数より、本人がつまずいた箇所を説明できるかに注目します。すべての発音を判定しようとせず、原稿や教材の音声に戻る道筋があるかを一緒に見ます。通学用の音源を増やす前に、次の点検項目で材料を絞ると、聞き流すだけの一覧になるのを避けやすくなります。
- 原稿の意味を本人が説明できる状態かを見ます。
- 聞き直す目的が、語の音か、文の意味かを本人に言葉にしてもらいます。
- 音声に違和感のある箇所を残したまま反復していないかを見ます。
- 人の録音でも、文字を見ずに内容を答える機会があるかを見ます。
- 通学路の雑音で聞き逃した部分と、静かな状態でも難しい部分を分けます。
よくある質問
声が人間らしいほど、よい教材になりますか
人間らしさだけでは教材の良さを決められません。先に見たBione(2020)の結果を踏まえると、声の好みと、内容への答えを別々に記録する方法が合います。選ぶときは、同じ短い文を聞いて意味を言い直し、その後に原稿で、抜けた語や取り違えた関係を点検します。声を替えて気持ちよく聞けた場合も、その答え合わせを残します。
遅く読ませれば、聞き取りの練習になりますか
遅い音声は、拾えなかった箇所を調べるための補助として使います。速さを変える前に、原稿を読んで意味がつかめるかを見て、語彙の問題と音の問題を分けます。遅くしてわかった箇所は、教材の元の音声に戻して聞き、文字なしでも内容を答えられるかを見ます。遅い声で聞けた記録と、元の音声で答えられた記録を分けておくと、復習する箇所を選べます。
通学中は新しい英文を聞くのと復習するのと、どちらがよいですか
音が重なりやすい通学路では、先に意味と音を確認した文の復習を選ぶと、聞き逃した原因をたどりやすくなります。新しい英文で知らない語に出会うと、原稿や辞書を開く作業が増えるため、立ち止まって落ち着いて扱えるときに回します。復習用でも周囲の音で文が途切れる区間は再生を止め、静かに聞ける状態で続きに戻ります。内容を答える点検も、その再開時に行います。
この記事の限界
対象にはブラジルの英語学習者やフランス語を学ぶ学生、母語で物語を聞く人が含まれますが、今回集めた研究に、日本語を母語とする中高生が英検4級向けに練習した後の得点を、人の録音と合成音声で比べたものはありませんでした。扱われた合成音声は方式の詳細が乏しく、現在の生成AIのニューラル音声を名指しで評価した学習者の研究も含まれないため、今の声での学習成果は未検証です。
聞いた直後の理解や本人の評価が中心で、通学時の反復から別の話者の英語を聞く力へ移る過程も十分には追われていません。研究で用意した朗読や調整された雑音の中で課題に答える状況は、通学中にイヤホンで聞く練習とは条件が離れています。
参考文献
- Bione T ほか. Synthetic voices in the foreign language context. Lang Learn Technol. 2020;24(1):169-186.
- Liakin D ほか. The pedagogical use of mobile speech synthesis (TTS): focus on French liaison. Comput Assist Lang Learn. 2017;30(3-4):325-342.
- Craig SD ほか. Text-to-Speech Software and Learning: Investigating the Relevancy of the Voice Effect. J Educ Comput Res. 2019;57(6):1534-1548.
- Arvidsson K ほか. Introducing text-to-speech in L2 comprehensibility research. Can J Appl Linguist. 2025;28(3):1-19.
- Rodero E ほか. Synthetic versus human voices in audiobooks: The human emotional intimacy effect. New Media Soc. 2023;25(7):1746-1764.
- Simantiraki O ほか. The impact of speech type on listening effort and intelligibility for native and non-native listeners. Front Neurosci. 2023;17:1235911.
- Brunow DA ほか. Effect of Text-to-Speech and Human Reader on Listening Comprehension for Students with Learning Disabilities. Comput Sch. 2021;38(3):214-231.
AIのもっともらしい間違いを、ひとつずつ一緒に疑う時間
- 向く人: 生成AIの説明と教科書が食い違ったとき、どちらが正しいかを根拠から確かめたい生徒
- 向く人: 子どもが生成AIで調べた答えをそのまま信じていないか、気になっている保護者
- 向かない人: 宿題や小論文を生成AIに書かせて、早く提出できればよいと考えている人
- 向かない人: 答えの根拠には興味がなく、正解だけを短く知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
声が人間らしいほど、よい教材になりますか
人間らしさだけでは教材の良さを決められません。先に見たBione(2020)の結果を踏まえると、声の好みと、内容への答えを別々に記録する方法が合います。選ぶときは、同じ短い文を聞いて意味を言い直し、その後に原稿で、抜けた語や取り違えた関係を点検します。声を替えて気持ちよく聞けた場合も、その答え合わせを残します。
遅く読ませれば、聞き取りの練習になりますか
遅い音声は、拾えなかった箇所を調べるための補助として使います。速さを変える前に、原稿を読んで意味がつかめるかを見て、語彙の問題と音の問題を分けます。遅くしてわかった箇所は、教材の元の音声に戻して聞き、文字なしでも内容を答えられるかを見ます。遅い声で聞けた記録と、元の音声で答えられた記録を分けておくと、復習する箇所を選べます。
通学中は新しい英文を聞くのと復習するのと、どちらがよいですか
音が重なりやすい通学路では、先に意味と音を確認した文の復習を選ぶと、聞き逃した原因をたどりやすくなります。新しい英文で知らない語に出会うと、原稿や辞書を開く作業が増えるため、立ち止まって落ち着いて扱えるときに回します。復習用でも周囲の音で文が途切れる区間は再生を止め、静かに聞ける状態で続きに戻ります。内容を答える点検も、その再開時に行います。