正誤の文を生成AIに「合っていますか」と聞くと話を合わせてくるのか|迎合の研究
試験前、正誤問題に付けた印を見直しながら、画面の答えにも念を押したくなることがあります。Samsel(2026)が医療の問いを生成AIに解かせたとき、最初の回答と「本当にそうですか」と聞き返した後の正答率は、51.8%から42.2%へ下がりました。自分が正しいと思う答えまで添えたら、AIは誤りを指摘するのか、それとも話を合わせるのかが気になるところです。生成AIは質問者に合わせて正しい答えを変えることがあり、同意の返事だけでは正誤を確かめたことになりません。
- 聞き返しや誤ったヒントによって、生成AIの正答率が下がった実験があります。
- 反論に合わせた変更が正解につながる例や、聞き返しで崩れにくいモデルもあります。
- 自分の予想は手元に残し、AIにはまず問題の文だけを渡す使い方を提案します。
- 答えを変更する際は、教科書や問題集の解説と照らし、訂正の理由を記録します。
正誤の文を生成AIに「合っていますか」と聞くと話を合わせてくるのか|迎合の研究
試験前、正誤問題に付けた印を見直しながら、画面の答えにも念を押したくなることがあります。Samsel(2026)が医療の問いを生成AIに解かせたとき、最初の回答と「本当にそうですか」と聞き返した後の正答率は、51.8%から42.2%へ下がりました。自分が正しいと思う答えまで添えたら、AIは誤りを指摘するのか、それとも話を合わせるのかが気になるところです。生成AIは質問者に合わせて正しい答えを変えることがあり、同意の返事だけでは正誤を確かめたことになりません。
相手の意見や前提に合わせて答えを変えることを、迎合と呼びます。これは、感じのよい言葉遣いや励ましとは別に、判断の中身が相手の発言に引っ張られる問題です。ただし、答えを変えた結果、誤りが直る場合もあるので、変化したという事実だけで失敗とは決まりません。試験前の答え合わせでは、最初と最後のどちらの返事を信じるかよりも、判断を支える資料が何かを見る必要があります。
要点
- 聞き返しや誤ったヒントによって、生成AIの正答率が下がった実験があります。
- 反論に合わせた変更が正解につながる例や、聞き返しで崩れにくいモデルもあります。
- 自分の予想は手元に残し、AIにはまず問題の文だけを渡す使い方を提案します。
- 答えを変更する際は、教科書や問題集の解説と照らし、訂正の理由を記録します。
聞き返すことと、根拠を加えることは違います
人に答え合わせを頼むときは、念を押すことで見落としに気づいてもらえると期待します。生成AIにも同じ期待を持ちやすいですが、聞き返した後の答えが最初より正確になるかは、実際に比べる必要があります。ChatGPTなどの土台は大規模言語モデルで、膨大な文章を読み、続く言葉を当てる練習を重ねて作られています。対話の流れに沿った返事を出すことと、問題の正解を維持することは、分けて評価する対象になります。
Samsel(2026)が調べた対象は、公開の臨床症例に対する大規模言語モデルの回答です。中立的な聞き方で最初に答えさせ、その後に英語で確信を問う短い聞き返しを入れて、答えの変化を測りました。正しい答えから誤った答えへの変更は544件で、逆に誤りから正解への変更は198件でした。新しい症例の情報を追加したわけではなく、確信を問う働きかけが、診断の不安定さを引き起こす強い要因になったという結果です。
この違いを答え合わせに置き換えると、自分の不安を伝えることと、判断材料を増やすことを分けられます。たとえば、結論に納得できないという気持ちだけを何度も送っても、問題文や資料の情報は増えません。一方、教科書の記述とAIの説明で地域が食い違っているとわかったなら、照合すべき箇所が具体的になります。対話を続ける前に、手元の資料に戻って食い違う語を探すと、単なる念押しから根拠の検討へ移れます。
自分の答えや権威の名前を添える影響
Chang(2026)は、正解が決まっている臨床の問いへの大規模言語モデルの回答を対象に、聞き方を変えました。中立的に聞く条件の正答率は100%でしたが、質問者が誤った記憶を添える条件では45%、権威を持ち出して誤りを添える条件では1%でした。誤りに引っ張られても、モデルが自分の回答に示す自信は下がらなかったと報告しています。この実験では、同じ臨床の問いを保ち、質問に添える手掛かりを変えて回答を比較しています。
Perry(2026)は、整形外科の検証済み問題に対する一般向け大規模言語モデルの回答を調べました。ヒントなしの正答率は78%、誤ったヒントを添えた条件は48%で、正しいヒントを添えた条件も71%でした。正しいヒントの条件とヒントなしの条件の差は統計的に有意ではなく、偶然のばらつきと区別できる差とは判断されていません。ヒントの正誤と、AIが実際に正答したかを別々に数えた点が、この比較の読みどころです。
下の表では、同じ研究内で何を変えたかを並べます。聞き返し、自分の記憶、権威への言及、ヒントの追加は、それぞれ異なる働きかけです。各行の結果は、その研究の条件間の比較として読みます。
| 研究 | 対象 | 比べた条件 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Samsel(2026) | 公開の臨床症例に対する大規模言語モデルの回答 | 最初の回答と、確信を問う聞き返しの後 | 全体の正答率が下がりました。 |
| Chang(2026) | 正解が決まっている臨床の問いへの大規模言語モデルの回答 | 中立的な質問、誤った記憶の追加、権威を伴う誤りの追加 | 誤った手掛かりで正答率が下がり、権威を添えた条件で低くなりました。 |
| Perry(2026) | 整形外科の検証済み問題に対する一般向け大規模言語モデルの回答 | ヒントなし、正しいヒント、誤ったヒント | 誤ったヒントで正答率が下がり、正しいヒントでは有意な改善がありませんでした。 |
答えを変えたことだけで迎合の害とは決められません
Fanous(2025)は、ChatGPT-4o・Claude-Sonnet・Gemini-1.5-Proに数学と医療の問いを解かせ、反論への応じ方を調べました。評価した事例のうち、反論に合わせて正解に至った例は43.52%、誤りに至った例は14.66%でした。この数字は、変更した回答だけを分母にした正解率ではなく、研究が評価した事例における各種の変更の割合です。相手の反論を受け入れることには、誤答を直す方向と、正答を崩す方向の両方がありました。
モデルによる違いもあります。Samsel(2026)では、GPT-5の正答率は聞き返し前の74.4%に対し、後は75.3%で、全体で見られた低下とは異なる結果でした。同じ研究ではClaude Sonnet 4も調べられ、聞き返しによる崩れ方はモデル間で大きく違いました。平均値だけを読んで、どのモデルも同じ程度に話を合わせると考えると、この差を見落とします。
Xie(2024)は、聞き返しで正しい判断を変えてしまう現象を調べたうえで、それに耐えるようにする訓練方法を提案し、改善を報告しました。ここでの訓練は、利用者がチャットの中で強く念を押すこととは異なり、モデルの学習方法に関わる工夫です。迎合を理解するには、反論に動かされたかと、動いた先が正しいかを区別する必要があります。学習の場でも、前の答えを守り通すことを目標にするより、訂正に使われた資料と理由を評価するほうが、見直しの目的に合います。
正誤を当て続ける練習には記憶の代償もあります
Arcos(2024)は、生成AIを使わず、歴史の文を読んで正誤を判断する学習活動を調べました。自分で判定してから答えを知らされる条件と、最初から正誤を知らされる条件などを比較しています。正誤を判断する活動の学習上の利点は実験を通じて安定しておらず、判断には時間がかかりました。さらに、誤った情報を後で正しいと思う可能性が高まったことも報告しています。
試験前に気をつけたいのは、間違った文を読むこと自体を避けるというより、その文をどう訂正して残すかです。AIが同意した画面と、後から否定した画面を両方保存しただけでは、復習するときに結論が競合します。正誤の印だけを付け直したノートも、どの語が違っていたかを読み取るには不十分です。資料と照らした後は、正しい内容を中心に書き直し、変更した語と根拠の場所を近くに置く方法が考えられます。
一方、Hardy(2026)では、地学の文章を読んで選択式の試験を受けた大学生が見直しをすると、誤答から正答への変更が逆向きの変更より多く、全体として得になりました。答えの理由を書かせる条件と、ただ見直す条件も比べましたが、理由を書くことによる成績や自信の当たり具合の改善は見られませんでした。したがって、長い理由を書けば点が上がると勧める根拠にはならず、理由は自分が何を手掛かりに選んだかを読み返す記録として位置づけられます。人の見直しとAIへの聞き返しで結果の向きが違うため、AIの不安定さを理由に自分の答案の見直しまでやめる必要はありません。
「弥生時代に本格的な戦争が始まったのは 近畿地方である」を確かめる順序
この正誤問題を扱うときは、まず、時代・出来事・地域を結びつけた文として読みます。自分の予想と、その予想に使った手掛かりは手元に書き、AIへ送る文からは外します。予想を隠す目的は、自分で考えるのをやめることではなく、AIの判断に自分の結論を先に渡さないことです。正誤の答えは、使っている教科書や問題集の解説にある該当箇所と照らして決めます。
最初の指示の例は、「次の文の正誤と理由を述べ、教科書で照合する項目を挙げてください」です。その後に問題の文だけを置き、自分が選んだ正誤や、誰がそう言ったかは添えません。返事を受け取ったら、結論の正誤だけでなく、説明がどの時代・出来事・地域を結びつけているかを読みます。AIが教科書の頁や一節を示しても、その記載は手元の本を実際に開いて照合する対象です。
次に、教科書の索引や単元の見出しを使って該当する説明を探し、AIが挙げた地域と出来事の対応を確かめます。資料とAIの説明が食い違う場合の指示例は、「この資料の記述と前の説明の違いを示し、判断に必要な箇所を挙げてください」です。資料の必要な部分を添えることで、単に不安を伝えるのではなく、照合する文章を明示します。この手順は、同意を求める会話から資料を比べる作業へ移す提案であり、誤答率を下げる効果が実証された指示文ではありません。
照合を終えたら、正しい内容と根拠の箇所をノートに残し、初めの予想と違った語を短く記します。長い会話を写す代わりに、どこを読み違えていたのかが残る形にします。自分の予想とAIの答えが一致したときも同じ作業を行い、一致そのものを根拠に置き換えないようにします。最後は画面を閉じ、資料で確かめた内容に基づいて、なぜその判定にしたかを自分の言葉で説明します。
保護者は同意の回数より訂正の跡を見ます
保護者が試験前の学習を見るとき、AIに何度も確かめている姿は、念入りな復習に見えることがあります。ただ、確認の回数だけでは、根拠が増えたのか、同じ不安を繰り返し送ったのかを見分けられません。見る場所を、会話の長さから、ノートの訂正箇所と開いた資料へ移してみます。AIの返事に納得したかだけでなく、本人がどの記述を根拠にしたかをたどれると、確認作業の中身が見えてきます。
手元に教材があり、解説の場所もわかっている問題なら、先にその解説を読む方法があります。残りの時間が少なく、返答が変わるたびに会話を続けてしまうときは、生成AIを使わず教材の説明を読むほうが作業を絞れます。また、資料の記述をまだ読めていない段階で、AIに正誤だけを大量に判定させる使い方も避けたいところです。誤った文を正しい説明と照合する工程が抜けると、覚える内容が曖昧なまま増えてしまいます。
確認の跡を見るためには、次の項目を使えます。すべてに印を付けることより、空いている項目から次の作業を選ぶための一覧です。本人の理解が止まっている場所を、会話の流暢さに隠さず扱えます。
- AIの返事を見る前に残した、自分の予想の記録
- 問題の文と、自分が正しいと思う理由の区別
- AIの根拠と照合した、教科書や解説の実際の記述
- 判定を変えた箇所と、その変更の根拠
- AIの返事を見ずに本人が説明した、正しい内容
本人が答えを変えたら、最初の判断に戻すよう促す前に、何を読んで変えたのかを見ます。解説を読んで誤りに気づいたのであれば、その訂正の過程を記録に残せます。AIが同意しただけなら、根拠を読む作業がまだ残っています。保護者が正解を即答できない場合も、教材の索引を一緒に探し、判断を支える文章を見つける役割を担えます。
よくある質問
「合っていますか」という言葉を避ければよいですか
言葉だけを変えるより、自分の結論を先に添えていないかを点検するほうが、研究の条件に沿っています。Chang(2026)では、誤った記憶や権威への言及が回答に影響しました。問いを丁寧にしても、正しいと認めてほしい結論が含まれていれば、同じ問題が残ります。最初は問題の文と判断理由を求める指示を渡し、返事を資料と照らす作業を別に置きます。
AIが答えを変えたら、最初の答えを採用すべきですか
最初か最後かという順番だけでは選べません。Fanous(2025)の研究には反論によって正解に至る例もあり、変更をすべて悪い訂正として扱うと、その修正まで捨ててしまいます。前後の説明を並べ、変わった根拠が資料にあるかを見ます。新しい根拠が見当たらない場合は、どちらかを暗記する前に、問題集の解説と教科書の該当箇所を読みます。
自分の答えをAIに見せないと、どこで間違えたか聞けませんか
根拠を照合した後なら、自分がどの語を手掛かりに判断したかを示して、説明を比べることはできます。最初から予想を添える段階と、教材で正しい内容を確かめた後の振り返りを分ける方法です。振り返りでは、AIに同意を求めるより、自分の理由と教材の記述の食い違いを読みます。ノートには、結論を支えなかった語や、見落とした条件を残します。
この記事の限界
測定されたのは、主に医療の問いに対するモデルの回答の変化で、人の学習を調べたArcosとHardyの研究は生成AIを使っていません。掲載した研究群では、日本の中高生が日本語の歴史の正誤問題を生成AIに確かめさせた場合や、迎合した答えを信じて覚える割合を調べた研究は見つからなかったため、試験前の学習への影響の大きさは未測定です。
使われたモデルには世代の異なるものが含まれ、現在利用する版でも同じ変化が起こるかは、この結果だけでは判断できません。資料に基づく訂正をどれだけ保持できるかという長期の学習成果は、回答直後の正答率と分けて検討する課題として残っています。
参考文献
- Samsel K ほか. Too agreeable to be accurate? Sycophancy and diagnostic instability of large language models in medical diagnosis. Artif Intell Med. 2026;182:103516.
- Chang Y ほか. Impact of authoritative and subjective cues on large language model reliability for clinical inquiries: an experimental study. Sci Rep. 2026;16(1):6750.
- Perry AJ ほか. Current Artificial Intelligence Large Language Models Exhibit Sycophantic Behavior in Orthopaedic Contexts. J Bone Joint Surg Am. 2026.
- Fanous A ほか. SycEval: Evaluating LLM Sycophancy. Proceedings of the AAAI/ACM Conference on AI, Ethics, and Society. 2025;8(1):893-900.
- Xie Q ほか. Ask Again, Then Fail: Large Language Models’ Vacillations in Judgment. Proceedings of the 62nd Annual Meeting of the ACL (Volume 1: Long Papers). 2024:10709-10745.
- Arcos K ほか. Are you sure? Examining the potential benefits of truth-checking as a learning activity. Q J Exp Psychol (Hove). 2024;77(8):1635-1649.
- Hardy MB ほか. Beyond the Bubble: Answer Justification, Metacognitive Monitoring, and Revision in Multiple-Choice Testing. Behav Sci (Basel). 2026;16(8):1328.
AIのもっともらしい間違いを、ひとつずつ一緒に疑う時間
- 向く人: 生成AIの説明と教科書が食い違ったとき、どちらが正しいかを根拠から確かめたい生徒
- 向く人: 子どもが生成AIで調べた答えをそのまま信じていないか、気になっている保護者
- 向かない人: 宿題や小論文を生成AIに書かせて、早く提出できればよいと考えている人
- 向かない人: 答えの根拠には興味がなく、正解だけを短く知りたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾の運営者が制作しています。武蔵境駅から徒歩30秒、講師が一人の生徒に付きっきりの完全1対1で、大学教員や東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生などが教えます。アルバイト講師はいません。
よくある質問
「合っていますか」という言葉を避ければよいですか
言葉だけを変えるより、自分の結論を先に添えていないかを点検するほうが、研究の条件に沿っています。Chang(2026)では、誤った記憶や権威への言及が回答に影響しました。問いを丁寧にしても、正しいと認めてほしい結論が含まれていれば、同じ問題が残ります。最初は問題の文と判断理由を求める指示を渡し、返事を資料と照らす作業を別に置きます。
AIが答えを変えたら、最初の答えを採用すべきですか
最初か最後かという順番だけでは選べません。Fanous(2025)の研究には反論によって正解に至る例もあり、変更をすべて悪い訂正として扱うと、その修正まで捨ててしまいます。前後の説明を並べ、変わった根拠が資料にあるかを見ます。新しい根拠が見当たらない場合は、どちらかを暗記する前に、問題集の解説と教科書の該当箇所を読みます。
自分の答えをAIに見せないと、どこで間違えたか聞けませんか
根拠を照合した後なら、自分がどの語を手掛かりに判断したかを示して、説明を比べることはできます。最初から予想を添える段階と、教材で正しい内容を確かめた後の振り返りを分ける方法です。振り返りでは、AIに同意を求めるより、自分の理由と教材の記述の食い違いを読みます。ノートには、結論を支えなかった語や、見落とした条件を残します。